卒業生からのメッセージ Report

応用生命科学部/動物科学科MENU
日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
阪口真美子

『将来への架け橋となった大学生活』

阪口真美子さん 2008年度卒

理化学研究所バイオリソースセンター
実験動物開発室 生殖工学グループ

■ 現在の仕事に関して

仕事風景 現在、派遣職員として理化学研究所バイオリソースセンター(理研BRC) 実験動物開発室の生殖工学グループで勤務しています。理研BRCは、マウスの収集、保存、提供事業とその系統維持に必要な技術開発事業で成り立っています。収集したマウスは国際的マウス系統検索サイトInternational Mouse Strain Resource(IMSR)へ登録し、世界に向けて情報を発信しています。平成21年1月時点でIMSRへの登録系統数は2287系統であり、ジャクソン研究所に次いで世界第2位となっています。このように、理研BRCはマウスリソースの国際連携のための重要な機関です。
私はマウスリソースの保存事業である、体外受精(IVF)、凍結胚、精子の作製、胚移植などの生殖工学技術による胚操作業務に携わっています。IVFとは、過剰排卵処理を施して得た卵子と精巣上体から採った精子を人為的に体外で受精させる手法のことを言います。効率的に多くの受精卵を得ることができるIVFは胚移植と対で用いられています。これらを行う目的としてクリーンな動物施設へのマウス系統の導入、そして提供依頼される世界中の研究者への対応が挙げられます。理研BRCには新しい系統が次々に寄託され、これらの系統のうち提供の依頼が多い系統以外は、経費の削減、飼育スペースの確保および輸送の簡便化のため、胚・精子の凍結保存をします。IVFで作製した受精卵のうち、胚移植を行わないものはガラス化法によって凍結保存します。それらはそのまま外部へ提供されるケースもあれば、マウス個体で欲しいという依頼に応じて融解し、移植に用いられるケースもあります。また、遺伝子改変系統は凍結胚を作製すると同時に精子凍結も並行して行います。その際は運動性、濃度などを必ずチェックし、IVFに使用可能な精子を保存するようにしています。たとえ、運動性や濃度が低い精子でも、卵子に直接精子を注入する顕微授精(ICSI)という手法を用いて胚をつくることが可能です。以上が、理研BRCの胚操作業務の流れになります。

■ 学生時代の思い出

今は社会人になった私も、1年前まで大学の研究室で実験に明け暮れていました。在学中に過ごした動物生殖学教室での日々はとても充実していたと感じます。3年生の時は、講義・実習と両立させながらハタネズミ、マウスの世話、培養液の調整や器具の洗浄など実験する上で知っておかなければならない基礎を学び、4年生になってからは各々が興味ある卒論研究を受け持ち、技術や知識を身につけるとともにより深いところを追究する1年でした。私はマウスにおけるIVF由来胚移植後のプロジェステロン投与が胎盤構造にどのような影響を与えるかという、卒論実験に取り組んでいました。進めていく上で勇気づけられたのは、先生方と室員の存在です。失敗を重ねて落ち込んでいるときも、励まされて頑張っていたなあとよく思い出します。お互い支え合いながらいくつもの困難を乗り越えてきた仲間とは、卒業後もしばしば連絡を取り合っています。これからもこのつながりを大切にしたいと考えています。

■ 在校生へのメッセージ

現在の職場に就きだした数ヶ月間は、手法も設備も学生時代とは異なるため、ついていくことが精一杯でした。最初は仕事というより、実習を受けているような感覚でした。毎日体験させてもらうこと全てが新鮮だと感じていたからです。初めて、ホルモン投与に使用するマウスの匹数やインキュベーター内に積み上げられた胚培養用プラスティックディッシュの枚数を見た時は驚きました。やはり大学と規模が違うのだと実感しましたし、責任ある仕事にやりがいを感じました。一方で、世界に通ずるマウスリソースの情報発信源となっている大きな組織の一員になることに、不安さえ感じました。当初は失敗ばかりでしたけれども1年ほど経った今、周りの様子が少しずつ見えるようになり、自分自身で考えて動けるようになってきました。専門的にわからないところもありますが、大学で学んだことは大いに生かされていると日々実感しています。今後は自分の技術に自信を持って臨めるよう努力するとともに、新しいことに挑戦していきたいです。また、作業の繰り返しにならないように問題点や改善点など常に意識して取り組むことが必要です。それらに対して、どのように判断するかこれから養っていきたいと思います。
おそらく、動物が好きだから、動物に関わる職業に就きたいからという漠然とした理由を持って日獣大に入学される方が多いと思います。1、2年生の頃は講義がほとんどで、動物に触れあう機会は少ないです。けれども動物科学科では、自分の希望次第で牧場や動物園など、様々な場所で実習ができます。現場で実際に大動物に触れ合って多いに学んで下さい。また、勉強だけに限らず、学生生活を有意義なものにするためにいろいろなことに挑戦して欲しいと思います。そして自分が夢中になれるものを見つけたら、あきらめないことが重要だと思います。時間はかかるかもしれませんが、社会に羽ばたくための原動力になるのではないでしょうか。