食のいま

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第50号: 伝統の器を楽しむ食卓風景 -1月-

一月七日の七草粥に使われる「春の七草」を描いた漆盆をご紹介しましょう。下表に示す春の七草が、蒔絵によって描かれた美しい作品です。
春の七草
古代中国では元日から一月八日までのそれぞれの日に、鶏(1/1)、狗(いぬ、1/2)、羊(1/3)、猪(1/4)、牛(1/5)、馬(1/6)、人(1/7)、穀(1/8)を占う風習がありました。このため、一月七日を「人を占う日」の意味から人日(じんじつ)と呼ぶようになったのです。また、人日の日に七種の菜を羹(あつもの、熱く煮た吸い物を指す)にして食べると無病息災ですごせると考えられていました。この習慣が中国から日本に伝わり、宮中では平安時代から菜を摘む行事が定着していき、その後、一般にも七草粥の習慣が広まりました。七草粥をいただくこの日を人日の節句といい、五節句のうちの一つとなっています。
前日の一月六日にスーパーマーケットで七草セットを買い、翌朝に粥を作る人が多いのではないでしょうか。植物の図鑑では七草の多くが野草として、道ばた・田畑・庭の隅などどこにでもみられる、と説明されていますが、私自身は、残念ながら、そしてお恥ずかしながら自分で7種全部の「菜を摘む(探し出す)」自信はありません。江戸時代にも江戸(現・東京)、京都、大坂(現・大阪)では六日に菜を売り歩く商売がありました。いにしえの時代にも節句行事を支えてくれるビジネスパーソンがいてくれたのですね。
「春の七草」を描いた漆盆