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「この一冊」 図書のご紹介

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
特別展 戦国の城と馬

特別展 戦国の城と馬


(財)馬事文化財団 馬の博物館 2010年
2013/12/24更新201314号
分類番号は210.47。『ホースパレード』は210.09。“御馬揃”のトップバッターは丹羽長秀か! いま三谷氏の映画で活躍中ですね。『戦国の城と馬』には『のぼうの城』の忍城図もあり。

当館は入るとすぐ、赤いソファの新聞雑誌コーナーだ。ソファからは写真集など眺められる。そこに、何冊か「馬の博物館」から頂いた図録がある。
図録。展覧会を開催した際に販売されるあれですね。実は筆者は、この博物館の図録のファン。上野にあるビッグな館のような規模はないが、的を絞った企画がイイ。企画展なら他館から来る史料もある(またその“他館”もバラエティ豊かなんだ)。
来年の大河ドラマは再び戦国時代、この一冊で気分を先取りしよう。

『特別展 戦国の城と馬』は、2010年の企画展。
巻頭に、学芸員の方の「戦国期の馬と人びと」という一文あり。読みやすくてディープなので、ぜひじっくりと。戦国時代にいた馬は「在来種」で、ドラマと違い、本当はちっちゃいのだ。ではでは、伊達輝宗が織田信長に献上するような「名馬」はどれくらいの大きさだったのか。
名馬とはこういうものなのね、と具体的に実感できて、この文、ポイント高いです。
また、馬の毛色の解説は、前々回ご紹介した『日本の家畜・家禽』の写真をお手元に読むとよりグッドだろう。織田信長があの“御馬揃”の際に選りすぐって出した一頭に「小雲雀」という名があって、なんと趣がある名前かと思っていたが、そうかー、たんに毛色(雲雀毛)からついた名前だったのね。これも納得。
そして、数々の展示物の写真。「馬」という括りでこれほど多様な種類の展示ができることに拍手である。まず、馬具。ルイス・フロイスが驚いているように、日本には蹄鉄がなかった。そして鞍が、革でなく漆や木だった。それはそれは立派な工芸品で、螺鈿細工などなかなかうつくしい。さらに装飾品としては、馬につけるお面や、馬鎧もある。革に金箔押しの豪華版だ。セレブ馬はこういうものをつけるのか(飾るだけかしら)。ツヤツヤで立派な体格の「青毛」にでも乗っけたら、さぞや見栄えがするだろう(馬上の武士がイケメンならさらにうれしい)。
そして考古学分野としては馬の骨。史学として文書、軍記。美術品として合戦図。「賤ヶ岳合戦図屏風」は金箔キラキラ、賤ヶ岳は目に痛いほど青々と描かれ、けっこうな迫力である。なんと六曲一双の「洛中洛外図」まであって、驚いた。ちゃんと「馬の博物館蔵」となっているから、所蔵品なのだ。すかさず巻末解説を読むと、行幸図のように定型化された図案でないのが、かえって珍しいとある。ふむふむ。だから馬たちも生活に密着した姿で描かれているというわけだ。牛も荷物を牽いたりして活躍している。

こうして図録をじっくり眺めるのは、いいですね。試しに市立図書館などで検索してみても「図録」でかなりヒットする。書店では買えないのでお得感もあるし、年末年始はお近くの図書館でお宝図録探しをして、のんびり年越しというのもおつなような(物好きなような)。

もう一冊ご紹介するなら『ホースパレード 華やかなる日本の行列』(2008年の春季特別展)。『後水尾天皇行幸図屏風』ほか、ゴージャスな展示物が満載だ。江戸時代の、琉球や朝鮮からの使節団の行列も珍しい。筆者おススメは『信長公記』の“御馬揃”の抜粋。誰が、どんな順番でパレードに加わったか、つらつら読むのは絶好のヒマつぶしである。信長のタカラヅカ的コスチュームも楽しい(いろんな意味で)。さらに、不参加組の秀吉が、嫡子(なんと信長からの養子)の御次丸を見物にやろうという書状が載っている。誰を付き添いにするとか気を配っていて、ちょっと惹かれるエピソードだ。実の父親の晴れ姿を、養子に出された御次丸は、どんな気持ちで眺めたのだろうか。

というわけで、ヘビの本で始まった2013年、来年の馬で〆てみました。来年もどうぞ当欄にお立ち寄りください。よいお年を。

図書館 司書 関口裕子