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「この一冊」 図書のご紹介

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JAPAN FAQ

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David Thayne (洋販ラダーシリーズLevel 4 : 2005年)
2014/09/01更新201407号
分類番号は837。初めてリーダー本をピックアップしてみました。著者は『その英語、ネイティブにはこう聞こえます』シリーズを手掛けた方で、読んだ方もいるのでは。

Introductionには、著者が20年前に成田空港に降り立ち、最初はすべてが「まるで違う惑星のように」思え、次第に押し寄せる疑問を理解したいと感じる過程が書かれています。そして「英語を話せる人に出会うと尋ねてまわったけど、中には自分の国の基本的なことすら知らない人もいるのだった」と、ここはビックリマークつきで、あ、あらら・・・ではでは、外国の方々はどんなことが知りたいのか? 先に知っていれば説明もしやすいでしょ? そう、それはこんな事柄たちです・・・というのを書き並べた一冊です。
なんとなく予想がつく、ような気もするでしょう。日本食とか、気候とか、習慣とか。確かに「そんなのガイドブックにあるよ」的な、例えば「日本の道路では車は左側通行です」とかも載ってます。でも、読むとやっぱり面白い。だってそこに「日本では車庫証明がないと車は買えません」と続けられちゃあ「そっか、車庫証明って国際標準じゃないんだ」と再認識するじゃないですか。筆者は全編、そんなちょっとしたギャップを楽しみまくり、退屈なしでイッキに読みました。
思えばこれまで、筆者もイロイロと聞かれてきたものです。「なんで日本人はイタリアに来ると一人があんなに買い物をするのか」(私の答え:た、たぶん親戚や友達に頼まれてですよ。日本で買うと関税かかるんで・・・)、「携帯電話、何をあんなに高速でいじってるんだ」(ええと、漢字変換とかありまして)、「日本人は義務教育で何年英語をやるんだ」(・・・正直に答えるしかない)、「どうしてあんなに水を飲むのか」(日本に比べると乾燥してる国が多いんだい!)・・・そして、思わぬところで誉められビックリする日本事情(例:和式トイレはいいね! どこにも触らずに用を足せて、とっても衛生的だよ!)。
・・・本書にも随所に「そこかい!」というポイントがある。
Q「日本のデパートってどんな感じ?」→A「とても大きいですが、だいたい同じフロア構成です」(言われてみれば海外のデパートってもっとイロイロです)
Q「日本の書類によくある赤い小さなスタンプは何?」→A「それはハンコと言って、署名の替わりに使用します」(そうか、目につくでしょうね)
Q「日本の住宅では、どこで靴を脱ぐの?(靴を脱ぐのは知ってるんだな)」→A「玄関と呼ばれるエントランスホールで脱ぎます。スリッパという室内履きが用意されていますが畳の上では履きません」(スリッパの履き心地は悪いと思う、とのコメントも)
Q「携帯電話にぶらさげている、あの細かいモノたちは何?」→A「特に若年層にとって、携帯電話は単なる通信手段ではありません。装飾したり、小さな工芸品を結びつけたり、かけてくる人毎に着信音を付与したり、そのメロディを自分で作ったりします」(いやぁ、これって日本独特なんですねぇ・・・)
Q「どうして日本人は血液型にあんなにこだわるの?」→A「多くの日本人が、血液型がそれぞれ人格や才能の特徴を持つと信じています」(血液型占いは珍しいのか!)

他にも「西洋では名刺はただ連絡先を書いた紙切れですが、日本では重要なひとつのツールです」とか「多くのレストランの店先にあるカーテンは“暖簾”。かかっていれば営業中です」とか「日本茶は砂糖やミルクを入れずプレーンで飲みます」とか、あらためて読むといちいち新鮮でした。
なかでもいちばん(筆者には)印象的だったのは、これ。
「皇居周辺を歩くと、目を引く建造物がないことに気づくでしょう。多くの国では有名なスポットとして自由の女神やビッグ・ベンやエッフェル塔など巨大モニュメントがあります。しかし日本では、本当に大きくて著名な歴史的モニュメントは富士山を除いて殆どありません」・・・本当にそうかは意見が分かれるかもしれませんが「日本人は小さくシンプルなものにも美を感じ、誇りに思うことができるのだと学びました」の一節は、ちょっと照れくさくもなんだか嬉しかったです。
小さな褒め言葉や心配りも、ちゃんとキャッチして大事にしていきたいものです。言われないとわからないことは、特に。

図書館 司書 関口裕子