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グローバル恐慌
-金融暴走時代の果てに-

西源二郎・猿渡敏郎(東海大学出版会 2007年)
2009/07/22更新 014号
「地獄の扉が開いた日」。著者はあの2008年9月15日をそう書いている。いわゆるリーマン・ショックが全世界を打ちのめした日である。
“それ”は、どういう流れで起こり、そしてどういう事態につながっていったか、という一連の状況を掴むのはそれなりに難しい。本書が1971年のニクソン・ショックから説明しているのも、なるべく具体像を俯瞰で見せたい、という意図だと思われる。すでに金融の動きを国単位、出来事単位で捉えるのは不可能だからだ。
サブプライム・ローン問題、リーマン・ショック、シティグループの損失補填、アイスランドクローナ暴落、米国や欧州の対応そしてアメリカ自動車産業危機までの一連の流れを、比喩やキャッチフレーズを多用してわかりやすく述べている。特徴としては、前述したように「恐慌の歴史」とも呼ぶべき経済史と、その対応によって形作られてきた現在の世界金融の仕組みの説明にかなりのページを割いているところだろう。それによって、今回の「世界金融危機」-つまり「グローバル恐慌」の特色が掴みやすくなっている。
割とドラマティックな書き方で、メリハリがあるので一気に読める。あとがきを読むと「緊急出版」ということだったようであり、日付が2008年12月になっている。まさに、GM・フォード・クライスラー自動車三大企業への巨額の政府融資法案が、アメリカ上院で廃案となった波乱のときである。危機の渦中から生まれた一冊だからこその迫力、と言えるかもしれない。

以前ご紹介した『サブプライム問題の正しい考え方』と合わせて読めば、よりいいかも。