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故事成語でわかる経済学のキーワード

梶井厚志 (中公新書1871 2006年)
2009/07/22更新 015号
「矛盾」や「四面楚歌」など、そんなの知っている、と言われる勿れ。
意味だけでなく、その「故事」がどんな場面で、何のために引用されたかというシチュエーションがポイントなのである。これがけっこう面白いのだ。
そしてそれがいつの間にか、経済学のオハナシになってしまうのだ。
要は、語り手がなかなか面白いセンセイなのである。
冒頭の「覆水盆に返らず」で“何を費用とみなすべきか経済学ではこう考える”というオハナシを始め、「蛇足」の“追加的利害とは”に続き、いやぁ最後までスラスラスラリと読めてしまった。「漁夫の利」では、経済学におけるゲーム理論を説明する一環として“先読み”を語るのだが、“世の男性が、盛り場で女性に対してしくじったり散財したりする原因は、たいていの場合は先読みの失敗である”とかサラッと言っていて、笑わされてしまった。
マイナーな故事成語としては例えば「洛陽の紙価を貴む」。“これほどまでにエレガントな故事成語があるだろうか。この感動を伝えるために市場理論で説明しよう。洛陽の紙価が高騰したのは…”と、もう余裕たっぷりである。講談みたいだ。

故事成語を一般常識として覚えられるかなと思って本書を選んだが、それ以上! 話のうまい大学教授のおじさんが親戚にいて、テレビにも飽きたお正月、コタツでこんな話をしてくれたら、さぞかし経済学の素養が高まるであろう。そんな親戚は滅多にいないって?だいじょうぶ、そのために本書があるのである。