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シュウカツの友

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アイガモがくれた奇跡

古野隆雄 (家の光協会 2012年)
2013/02/27更新 057号
副題には「失敗を楽しむ農家・古野隆雄の挑戦」とある。
タイトルに登場する「アイガモ」は、田んぼの雑草や害虫やジャンボタニシを駆除してくれる、この農法のパートナーたちである。秋になればカモ肉になってくれる(!)。『プロフェッショナル仕事の流儀』等のテレビ番組でも取材されたから、ご覧になった方も多いのではないだろうか。
本書にはこの農法に至った過程と、その詳細が描かれている。
それだけでも面白いのだが、なんだかその後の発展が読むほどにものすごく、採れたお米を使った純米酒やアイガモ料理の本といった「副産物(?)」が登場するだけでなく、海外にも飛び出して、ちょっとこれ、どこのサクセスストーリー?みたいな展開になる。そのインターナショナルっぷりと来たら。著書の英訳本? 海外からの取材? 世界経済フォーラムへの出席? そしてベトナムや韓国や中国に農法も着実に広まってるよ!
失敗&奮起談をしずしず読んでいた当方としては、後半の怒涛の展開に仰天した。が、これはやはり地道な活動の積み重ねなのである。博士号まで取得されてなお、日々、農業の工夫を怠らない。ラストはまた、そういった農業の描写に戻るのがいい。

有機農業、スローフード、響きもやさしい言葉たちだが、内容はときに過酷だ。が、手間を省けばいい、カンタンならばいい、楽ちんがいちばん、とのみ唱える時代は終わっているように思う。それに気づいている人は、思いのほか、多いのだ。
いい本です。