図書館MENU

はたらく人びと

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
image

環境考古学への招待
―発掘からわかる食・トイレ・戦争―

松井章 (岩波新書930 2005年)
2009/9/4更新 022号
遺跡を調べて、サカナの骨が出てきたとする。
発掘されたものは、すべて貴重であろう。それこそ、骨までしゃぶりつくすイキオイで調べ倒すのだろうと思いきや、必ずしもそうではなかった、というから驚きだ。
動物や、植物の遺存体は、打ち捨てられていたこともあったというのだ。もったいないじゃないか! が、発掘に携わる先生方には専門外だったのだ。つまり「文学部史学科」の考古学者としては、生物学などにはキョーミがなかったらしいのである。
が、近年、そうした悲しむべき状況も変わってきた、という。例えば「トイレ遺跡」に考古学・文献史学・動物学・植物学・生化学・昆虫学・寄生虫学の研究者が一致団結して取り組む、といった姿勢が出てきたのである。
土器や木簡だけでなく、土を、タネを、骨を、調べる。こういった研究を「環境考古学」と呼ぶそうだ。

貝塚から出てきた魚骨を見て、首をかしげる。この、背びれと腹びれの棘は何だろう?
殻の幅が15センチはある、なにやら大きなカニだけど、何ガニだ?
松山市の遺跡にアシカの骨?瀬戸内海にアシカがいたのか?
見慣れない植物のタネ、イヌの噛み跡のある人骨、寄生虫の卵などから、過去の人間のライフスタイル、地球環境を明らかにしていく作業。専門外のためにわからないものを、別の専門家が解き、さらに別の研究者が分析し、徐々に姿が見えてくるのが、面白くないハズがない。
動物学や昆虫学の研究者には、こんなチャンスもあるかもしれないよ、ということを是非!ご紹介したかった。興味を持った方は、同じ岩波新書の『発掘を科学する』(岩波新書355 1994年)もどうぞ。
インディ・ジョーンズにはなれなくても、インディの協力者(ブロディ?ショーティ?)にはなれるかも。