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はたらく人びと

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
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アシカ語を話せる素質

中村元(海游舎 1995年)
2010/05/11更新 037号
大当たりの一冊! ピラニアやオウムガイからシーラカンスまで登場するが、掲載された写真はどれもツカミが抜群、センスがいい。文章も読みやすい。もとは「毎日中学生新聞」に連載された原稿だというが、これを読んでいた中学生たち(そして親御さんや兄弟姉妹)は幸運だ。

現在は水族館アドバイザーとして活躍されている著者だが、連載当時は鳥羽水族館の所属。本書の各登場動物とも、飼育係やトレーナーとしてお付き合いした仲である。
みんな同じ顔に見えるスナメリ。先輩トレーナーは彼らをちゃんと見分けて、アタマを撫でながら餌をやっている。うらやましい!と思った著者はまずホクロの有無から観察に挑戦する。また、水槽内では餌を食べず、飼育記録のないシノノメサカタザメの餌付けをしようと毎日ダイビングするが、急旋回されるたびに著者だけ水槽に激突する。アシカに咬まれ、オットセイに咬まれ、巨大スッポンに脅され…どの章も新鮮である。
そして、意外な一面や光景を紹介していくたびに「世界は驚きに満ちているんだよ」「だから自分でよく考えなくちゃならないんだよ」と囁いているような気がする。水や生き物の動きを文字と写真で追う本書だが、リアルである。息遣いが聞こえる。