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はたらく人びと

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
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ネコと暮らせば
―下町獣医の育猫手帳―

野澤延行 (集英社新書 2004年)
2010/06/18更新 042号
「ネコの飼い方」という分類で書架に並べたほうがいいのかもしれない。が、読めば読むほど「はたらく人々」コーナー向きの気がしてきて、こちらにすることにした。
著者は西日暮里で開業し、慣れ親しんだ下町で、ときには往診もしながら獣医師を続けている。日課は散歩。馴染みの道を歩きながら、馴染みのネコたちを観察して歩く。下町には沢山のネコがいる。飼い猫も多いが、野良猫が集う有名なスポットもある。
そんな著者が本書で綴っている内容は、実にきめ細かい。
室内飼いの工夫や猫まんまの作り方といった王道のテーマもあるが、野良猫問題への取り組みや災害時の対応など、ちょっとレアな話題もある。
きっと著者は今までに、ありとあらゆる質問をされ、ひとつひとつ、調べたり考えたりしながら答えを探していったのだろう。
ネコが喜ぶ庭づくりのコツは散歩しながら思いついたのかもしれないし、住民との立ち話から考えたのかもしれない。失せネコを戻すおまじないのあれこれは、飼い主から聞いたり、それをまた別の失せネコの飼い主に苦し紛れに伝えたりしたのだろう。
本書は、そんな「街の獣医さん」の日々の積み重ねである。こまかいこまかい、積み重ねである。だからこそ、ネコを知るとともに、獣医さんについて知ることもできるのである。