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熊と向き合う

栗栖 浩司 (創森社 2001年)
2010/10/22更新 048号
著者は、広島県山県郡の戸河内町(現在は市町村合併により安芸太田町)の職員で、長年、クマ問題と関わってこられた方。自他共に認めるオーソリティである。
クマ問題には、いくつかの側面がある。クマは人間や作物に危害を加える加害者だが、現代社会では森を安住の地とすることができない被害者でもある。
そこには「被害を受ける人たち」「クマを残したいという人たち」そして「無関心な人たち」がいる。本当は皆で考えなければいけない問題なのに、連携が難しい。
「クマを殺すのに疲れた」という言葉は切実だ。そして著者らが取り組んだのが「奥山放獣」という試みだった。

答えが簡単に出せない。せめて「次世代に答えを託すために」クマを殺さずにすむ方法を模索する著者が訴えるのは、そろそろ「専門家」つまり「プロ」が必要ではないか、ということだ。社会にはいろいろな職業があるが、これから生まれる仕事もある。
自然と人間の共存を図るための仕事は増えるのではないか。いや、増えなければいけないのではないだろうか。