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湘南の風に吹かれて豚を売る

湘南の風に吹かれて豚を売る

宮地勇輔(かんき出版 2009年)
2014/11/21更新 075号
著者が売っているのは「みやじ豚」という、おいしい豚肉である。
が、本書には、その豚肉の作り方はほとんど出てこない。なぜって、著者自身は、プレゼンが主な仕事だからだ。
本書でもハッキリ明記しているが、700頭あまりの豚を、丁寧に丁寧に、おいしくおいしく育てているのは著者の父上と弟さんなのである。
「みやじ豚」を食べつくす「みやじ豚バーベキュー」。近所の観光農園で開催する、シンプルなイベントだ。来たひとには「おいしかったらお友達も誘ってください」と勧誘し、1円も宣伝費を使わずにメルマガと口コミで発展、今は有名レストランに卸したり、ネットでバーベキューセットを売ったりもしている。
その傍ら、「農家のこせがれネットワーク」で活躍している。著者自身が「絶対継がない」と宣言していた養豚農家の“こせがれ”のひとりだった。
こせがれ達が農業に立ち還り、盛り上げる。それを応援する消費者も集まってくる。なんだか理想主義くさいが、読めばそんな感じはない。誰も、おかしなムリをしていない。
こういう動きなら、少しずつでも実を結んでいくかもしれない。「おいしい」に、人は集まるのだ。本書はその「おいしさ」の力を飾らず綴った一冊である。