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卒業生が米国獣医病理専門医(ACVP)認定試験に合格しました!

米国在住の本学OBが米国獣医病理専門医(ACVP)認定試験に合格しました!

獣医病理学教室 教授 高橋 公正

 米国在住の本学獣医病理学教室出身者が、今年の米国獣医病理専門医(ACVP)認定試験に合格したとの朗報が届きました。合格者は土屋 毅幸氏(メルク社勤務:1991年3月卒業)で本学出身者としては初めての快挙です。この朗報を伝えてくれたのは同じく獣医病理学教室出身の神原 隆仁氏(グラクソ・スミス・クライン社勤務:1984年3月卒業)で、神原氏もまた2005年に英国王立獣医病理認定医(RCP)の資格を取得しています。二人とも米国製薬会社の研究所に勤務し緊密に連絡を取り合う仲です。獣医の専門医認定試験の中でもこのACVPとRCPは最も長い歴史を持ち権威のあるものです。
 小生が22年前留学した米国環境保健科学研究所内にも、何人かの若い研究者がACVP認定試験に挑戦していました。この資格を取得することは、獣医病理学者としての実力と身分が保証されることを意味し、大学卒業後病理学を志すものにとって大きな努力目標になっています。そこでは、ACVPを取得した者は直ちに研究所長に連絡していました。何故なら直ちに給料のベースアップに繋がるからです。
 ここにお二人の合格体験記を寄稿して頂きましたのでご覧ください。お二人の益々のご活躍とご健勝を願いつつ、彼らに続くOB、OGの海外での活躍に期待いたします。

《ACVP合格体験記》

土屋 毅幸 氏
〔右手前が土屋 毅幸 氏〕

土屋 毅幸 [つちや たかゆき] (獣医学科 1991年3月卒業)

 私は本学の獣医病理学教室に在籍した4年間で、様々な病気で亡くなった動物や手術で摘出されたがんなどの組織検査を通じて獣医病理学の基礎を学びました。卒業後は化学品メーカーおよび製薬会社で、医薬品開発研究における実験動物を用いた非臨床試験の病理組織学的評価を行う研究におよそ20年間従事してきました。その後、当時所属していた会社の組織改変にともない、親会社であるアメリカの製薬会社の研究所に転籍し現在に至っています。かねてより外国の研究者と協力・交流しながら仕事を進めていくことに魅力を感じていたので、日本を離れアメリカに転居するという選択にもさほど躊躇はありませんでした。
 獣医病理を専門とする研究者は医薬品開発研究において重要な役割の一端を担っています。例えば、医薬品の候補化合物の安全性や生体に対する影響を病理組織学的な検査による最終確認もその一つです。このような獣医病理学に関連する職業・研究に従事する人々を対象に専門家認定を行う制度があります。日本では獣医病理学専門家協会(JCVP)が、アメリカではAmerican College of Veterinary Pathologists (ACVP) が認定を行っています。現在、日本だけではなく世界中の多くの企業や研究機関が獣医病理に従事する研究者に対し認定取得を推奨しています。
 また、アメリカではACVPの認定を受けることが獣医病理関連職に就くための必須要件と言っていいと思います。そのため、全米のみならず世界中からACVPの認定専門家を目指す人々が認定試験を受験しにアメリカに渡ってきます。そのような人達は家族や余暇を犠牲にして準備し試験に臨むのですが、その難しさからやむなく途中で諦める人も少なくありません。私の場合、この先アメリカで仕事を続けていくにはJCVPだけではなくACVPの認定も必要と考え、取得を目指しました。しかし、慣れない土地での生活の中で仕事と試験勉強の両立は楽ではありませんでした。それでも平日の早朝と休日の全てを勉強に費やし、2度の失敗を経て3度目の受験でようやく合格することができました。困難を伴った上での合格だったので、その達成感は格別なものでした。もちろん職場の上司や同僚および家族の理解とサポートが得られたから成し遂げられたもので、本当に感謝しています。獣医病理学の専門性を活かし世界中で新薬を待っている患者さんにより効果的で安全性の高い薬を届けることに貢献できる現在の職業にやり甲斐を感じています。獣医病理学の専門性を活かし活躍できる場は、日本に留まらず世界中に広がっているように思います。獣医として社会貢献を志す多くの後輩が、世界中に羽ばたいていくことを期待しています。

《RCP合格体験記》

神原 隆仁 氏

神原 隆仁 [かんばら たかひと] (獣医学科 1984年3月卒業)

 私は獣医学教育が6年制になってから最初の卒業生(1984年卒)です。在学中は獣医病理学教室に所属していました。大学院を経て英国ヨーク大学でポスドクとして研究生活を始めました。ここでフランスから来ていた今の妻と出会いました。その後米国ケンタッキー大学医学部、ニュージーランドのリンカーン大学、英国ケンブリッジ大学獣医学部などで免疫の研究や小動物臨床に携わりました。
 日本のファイザーで数年間、新薬探索研究にも関わりましたが、16年以上前に英国で病理研究に戻りました。グラクソ・スミス・クラインに移った後、6年前に同社のアメリカ転勤を希望して現在に至っております。ここでは病理研究に加えて10人ほどのグループのマネージメントもしています。研究所はペンシルバニア州フィラデルフィア近郊にあります。ニューヨークとワシントンの間に位置し、どちらへも車で行ける便利な所です。
 英国に住んでいた2005年にThe Royal College of Pathologistsの獣医病理学専門医試験に合格しました。この試験は本当に大変でした。数年間は仕事から帰った後や休日をすべて勉強に費やしました。家族や仕事もあり、3人の子供たちもまだ小さく大変でした。顕微鏡標本検査の試験は稀な腫瘍や病変の標本ばかりで、さらに短い時間に病因や類症鑑別も含めて病理組織所見をまとめないと時間切れになってしまいます。筆記試験がそれ以上に難しく、多くの専門書や最新の論文を何回も読んで覚えていないと合格点に達しません。その為、この資格を持っていない英国人病理研究者も多くいます。今まで受けた試験の中で一番苦労しただけに合格は一番嬉しい出来事でした。
 今では3人の子供達も大きくなり、一緒に住んでいる子供は一人だけになりました。それぞれ生まれた国が異なり、日本に住んだことがあるのは長女が数年間だけで、それも20年近くも前のことですので家族で日本語が話せるのは私だけという残念なことになってしまいました。アメリカの良いところはいろいろな人種が多く住んでいて、それをあまり気にせず暮らせることです。また、合理的で仕事も正当に評価されるのでやりがいがあります。大学同窓生でアメリカに永住している方は他大学に比べて少ないですが、みなさんも是非アメリカで活躍してみませんか?