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平成26年度全国水産試験場長会会長賞を受賞しました!


 平成26年11月に岐阜市内で開催された全国水産試験場長会全国大会において、平成26年度全国水産試験場長会会長賞の表彰式が行われ、本学教員が参加する研究グループの、「アユの異型細胞性鰓病の被害軽減化技術の開発」が会長賞を受賞しました。
 会長賞は、地域の水産業の発展に貢献、あるいは今後の水産試験研究の発展に寄与する優秀研究業績を対象とするものです。

「アユの異型細胞性鰓病の被害軽減化技術の開発」

 アユの養殖現場では、遊泳が不活発となる疾病が古くより知られ、その症状から「ボケ」と呼ばれて来た。我々は1998年および1999年に発生した「ボケ」病魚を検査した結果、鰓(エラ)に特異的な大型の異型細胞が出現することが特徴的であり(図1)、ある種のポックスウイルス(図2)が関与していることを見いだし(Wada et al., 2008)、アユの異型細胞性鰓病という病名を提案した(Wada et al., 2011)。その後、ウイルスの他に細菌感染も併発する症例が存在することが判明し、東京海洋大学および栃木県水産試験場との共同研究で、それらウイルスおよび細菌の種類を特定し、遺伝子配列も決定されてPCR検査が可能となった。さらに、飼育水温により濃度を変えた塩水浴が効果的処置法であることが判明した。しかしながら、PCR検査には時間、労力、費用がかさみ、塩水浴も発症後時間が経過すると効果が低下することから、より簡便かつ迅速に診断する手法の開発が望まれていた。
この疾病の特徴である鰓の大型異型細胞は、これまで病理組織学的検査を実施しなければこれを検出しえなかった。そこで、獣医臨床で一般的に用いられるスタンプ標本を病魚の鰓を用いて作成し、簡易染色を施した結果、大型異型細胞が容易に検出されることが示された(図3)。以上の研究成果を元に診断・治療マニュアルを作成し、全国自治体へ配布した。その結果、全国的に2007年には42.8 t(被害額88,011千円)であった被害が、2012年には31.2 t(被害額45,052千円)まで減少した。この成果が評価され、表記会長賞を授賞するに至った。大変名誉な事と感じている。
なお、本研究において日本獣医生命科学大学は病態解明と迅速診断手技開発を、東京海洋大学は原因ウイルス特定とPCR検査法開発を、また栃木県水産試験場は塩水浴手法の開発と現場指導とをそれぞれ分担した。

【引用文献】
Wada, S., O. Kurata, K. Hatai, H. Ishii, K. Kasuya and Y. Watanabe (2008) Proliferative branchitis associated with pathognomonic atypical gill epithelial cells in cultured ayu Plecoglossus altivelis. Fish Pathol., 43 (2), 89-91.
Wada, S., H. Atami, O. Kurata, K. Hatai, K. Kasuya, Y. Watanabe and H. Fukuda (2011) Histopathology of gill lesions of ayu Plecoglossus altivelis clinically diagnosed with ‘Boke’ disease. Fish Pathol., 46 (2), 59-61.

獣医学科病態獣医学部門病態解析学分野 水族医学研究室
教授 和田新平

図1 鰓の呼吸上皮が大型化した異型細胞(→)。

図2 電顕観察で異型細胞内にウイルス( → )が確認された。挿入された図はウイルスの拡大像。

図3 鰓スタンプ標本中にみられた大型異型細胞( →)。