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ブタからヒトへ良質なブタ受精卵作りがカギを握る 動物科学科とは 動物生殖学教室

ブタからヒトへ 再生医療が注目されている現在,ブタは,その形状や機能等が似ていることからヒトへの一時的な臓器提供動物として期待されている(異種間移植)。この目的のため,ヒトの生理的機能に合わせて形質転換(ヒトの遺伝子を導入)した臓器作出が必要となる。このような形質転換させた臓器を作出するにあたり,重要なステップの一つが,すべての細胞に分化できる胚性幹細胞(ES細胞)である。ES細胞を利用できれば,目的に見合った形質転換細胞さらには臓器を作出できるだけでなく,これらの細胞(臓器)の安定した供給が期待できる(図)。
ヒトへの医療目的を考慮した場合,最良の方法はヒト受精卵由来のES細胞を使うことであるが,受精卵の供給源および倫理的問題のために研究が制限されることが少なくない。一方,ブタでは食肉処理場由来の卵巣を利用できることから,実験に使用する卵母細胞を十分に供給できる。しかしながら,体外におけるブタ受精卵(胚盤胞,図参照)の作出効率は,多精子受精に代表されるいくつかの問題により満足のいくものではない。さらに,ES細胞研究では質の高い受精卵(胚盤胞)が数多く必要とされるが,この点についても解決せねばならない。これらの問題回避のために体内由来受精卵の利用も考えられるが,受精卵の定期的供給および実験動物準備のための設備等のコストを考慮する必要がある。
このようなことから,体外における効率的なブタ受精卵(特に,胚盤胞)作出法の早期確立が望まれており,これまで,ブタ受精卵の体外作出系に関して多くの実験結果が積み重ねられてきたが,決定的なものはない。このため,体内で自然に起こっている生理的現象を良く考察しながら,多精子受精低減および作出する胚盤胞の品質向上を目指して研究を進めている。(2008/02/01現在)