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平成29年度 学位記授与式 式辞

 本日ここに皆さんをお迎えし、日本獣医生命科学大学、学位記授与式を挙行できますことは、本学にとって大きな喜びであります。ただ今、大学院課程修了生13名、博士論文審査合格者2名、学部卒業生363名の皆さんに、学位記をお渡しいたしました。おめでとうございます。学びへの取り組みが、学位記の授与に至ったものであり、皆さんの努力に敬意を表します。教職員一同、心からお祝いを申し上げます。
 そして、本日ここに学校法人日本医科大学坂本理事長はじめ、多くの御来賓の皆様にご臨席を賜り、誠に有難うございます。
 さて、日本獣医生命科学大学を、学びの場として選ばれた皆さんは、武蔵境という都市と自然の融合した環境の中で、活力に溢れ、充実した学生生活を過ごされたことと思います。また、先生方の薫陶、事務職員の温かい支援、学友たちと過ごした数々の思い出を胸にいだきながら、この席に座っておられることと思います。
 皆さんが、入学されて今日、修了、卒業を迎えられるまでの時の流れを思い返しますと、自然現象による地球環境問題が進み、もはや世界が一致して、本気で取り組まなければ、解決しない時期を迎えています。世界情勢においては、政情が安定しない国々も多く、あちこちで内戦があり、難民が続出しています。世界平和を目指し、各国が協力、協調しなければならない状況下にありながら、経済大国と呼ばれる国々が、自国主義に走りはじめ、グローバルな問題に対し、マイナスの影響を及ぼすのでは、と懸念しています。科学においては、遺伝子操作、AI技術の目覚ましい進歩があり、国や業種の壁がなくなったデジタル技術の世界で、日々、加速度を増しつつ、私たちを取り巻く環境を作り出しています。近年、これらの変化は、目に見えて短いスパンで進んでいるように感じます。しっかり自覚していないと、それらの変化に、ただ流され、気づかぬうちに、個人は、大きな渦の中に飲み込まれてしまうのではないかと、不安すら感じます。

 皆さんは、武蔵境で過ごされた間に起こった様々な社会の変化、大学生活の変化を、どのように感じて、向きあってきたでしょうか。入学時の自分と今の自分とを比較して、変化したことは何でしょうか。抱いていた夢、期待をどの程度実現できたでしょうか。少なくとも、ここにおいての経験によって、一人ひとりの個性、感性が磨かれたことは、間違いないと思います。大学を巣立って、新たなそれぞれの場所で社会を構成する一員となる皆さんには、自分の周りで何が起こっているのかに、常に関心を持ち、それが社会にどのような影響をもたらすのか、或いは、自分の立場でできる最善は何なのかを、考えられる心のゆとりを持っていてほしいと思っています。
 「忖度」という言葉が流行りましたが、本来、これは、自分なりに考えて、他人の気持ちを推し量ることで、相手への気遣いであり、日本人のよくある特性で、「言わなくてもわかるだろう」も、その一つでしょう。しかし、人は、言葉を持ち、自分を表現できる存在です。「話す」ことに苦手意識を持たず、積極的に自分なりの考えを持って、周囲とコミュニケーションを図り、議論を尽くしてほしいと思います。「大学で学んだことが、社会に出て即戦力になることは少ないでしょう。学生として守られた環境下にあった皆さんには、社会における矛盾、理不尽さや、正義とは何かなど、多くの考えさせられる疑問、難問が待ち受けています。皆さんは「生命」に関わる分野に身を置き、日々研鑽を積んできたことにより、感受性が豊かで、人としての倫理観が心に刻まれていることを自覚してほしいと思います。何事においても、常に自分の心の声に耳を傾けて、納得のいくまで焦らず考えてほしいと思います。世界を見ても、目先の利益に誘導され、気づかぬうちに、どんどん上滑りしているかにみえる経済優先の社会が現実となってきています。皆さんは地に足を付け、土台をしっかり作り、社会というものをいろいろな角度から真摯な気持ちで、見据えてほしいと思います。何事においても土台作りには時間がかかり、成果が見えないこともあり、途中で投げ出したくなるのが大半でしょう。ペースダウンしてもあきらめず続けられる方法を、自分なりに探ってほしいと思います。前向きでおおらかに社会で活躍されることを心から願っております。

 ご家族・保護者の皆様には、この日を心待ちにしてこられたことと存じます。皆様の本学へのご支援に心から感謝するとともに、お慶びを申し上げます。
 学生のみなさんは、この機会に、今まで見守り育てて頂だいた多くの温かい励ましを振り返り、「ありがとう」の心を表現してください。いつも誰かに支えられていることを、忘れないでほしいと思います。

 結びになりますが、日本獣医生命科学大学は、皆さんが勉学や仕事上でのアドバイスを必要としているときには、学部・大学院の壁を越え、協力を惜しみません。また、近くに来られることがあれば、先生や研究室を訪ねてください。歓迎いたします。社会人同士としての語らいを大いに楽しみましょう。母校となる、日本獣医生命科学大学で学んだことを誇りとし、希望に満ちた未来社会を、切り開いていく推進役として、成長されますことを心から祈念して、式辞の結びといたします。

 本日は、誠におめでとうございます。

平成30年3月8日
日本獣医生命科学大学長 阿久澤良造