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第19号:「日本畜産の正念場」

吉村 格(准教授/牧場長補佐)

2008/1/22 更新
 新しい年、平成20年が畜産農家の苦悩と失望を抱えたまま走り出した。苦悩とは自分の経営を継続できるか否かの瀬戸際に立たされていること、失望とは日本農業を潰してはならないと思う見識をもつ消費者群の出現が間に合わなかったことである。
 実態経済以上に膨らんで行き場をなくした世界中のお金が、生産量には限りのある人の命を支える穀物を投機の対象として集まっている。海外からの飼料原料に頼る日本の畜産は、その高騰の煽りを受け産業そのものの存立基盤を根こそぎ崩壊させるほどの危機的状況にある。
 富士アニマルファームの位置する静岡と山梨の県境を背中合わせの西富士酪農地帯でも離農・廃業の噂は後を絶たない。既に、多くの農家は畜産の現場から撤退し、体力・経済力などの能力を持ち合わせなかった農家は借金と共に姿を消した。現在、生き残っている農家は経営者として十分な資質と運とを持ち合わせた人達である。しかし、これまでも自助努力により精一杯の体質改善に取り組んできた彼らに生産者としてのコスト削減など出来る状況にない。既に削ぎ落とせる余分なものは何も残っていない。もう将来に展望の開かれた明るい夢のある話をすることもなかなか難しい。今年は将に正念場、日本畜産大淘汰時代の幕開けの年となるかもしれない。
 富士アニマルファームで働く我々は、同じ畜産を志す仲間達の心労を思うと安穏としていられない。厳しい状況の中で我が身をさらけ出してやる利他的な行為こそ本物の人間力が試されると我が身を鼓舞している。消費者が日本農業に関心をもつようになり、明るい日差しが射してくるまで貧しくとも生活だけは持ち堪えて欲しいと農家に対する思いを祈りに代えながら新しい年を始めた。