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第32号:全学科が利用する教育・研究の場

吉村 格(准教授/牧場長補佐)

2008/10/31 更新
 阿久澤教授に引率された食品科学科3年次の学生が、乳製品製造学実習・肉製品製造学実習のために来場した。将来は食の専門家となる彼らに畜産の生産現場をどうしても見てもらいたいと長いこと思い続けてきた。やっと念願が叶い食品科学科の彼らを前に話をさせて貰った。
 先ずは消費者としての彼らに問うた。富士の湧水とか伏流水とかの名前で売られている単に汲み出しただけの水が牛乳の倍近い値段である。その銘水とやらを飲んで、高騰を続けるトウモロコシを食べて、朝早くから夕方遅くまで人手をかけられた乳牛から搾った生乳の方が安いのは何故なのか。滋養豊かな牛乳は「生もの」であるからこそ価値があると思うのだが、賞味期限が相当長い水よりも安価に売られていることをどのように考えるか。消費者が自分達の生活防衛のためと言って憚らないこの牛乳の価格は果たして適正なものかどうか、廃業を続ける農家の悲しみを込めて問うた。
 次に食の専門家となる彼らにお願いをした。一般の酪農家が厳しい環境の中で懸命に身を削って生産し、さらに各メーカーがこれまでの研究成果を基に安心・安全をモットーに加工し製品としているのが牛乳である。戦後日本の長寿と健康を支え続けてきた食品の一つが牛乳である。科学的な検証もせずにあたかも有害だとするような誤った不当な情報を流して消費者を不安がらせたり、恣意的に他の同業者を中傷することで自分の生産している牛乳だけが身体に良いとするようなフードファディズム。日本の食生活を危うくするこのようなフードファディズムに陥らないために、食品としての牛乳の確かな功罪や根拠に基づいた真っ当な評価を市井にあって多くの隣人に熱く語って欲しいとお願いした。
 ともあれ、紆余曲折と試行錯誤の連続だった附属牧場の沿革に、今回の食品科学科の実習によってやっと本学の全学科が利用する教育・研究の場と書き込めることとなった。私が赴任したときには、獣医学科2年次の実習のためだけに存在した1年に3泊4日を利用するだけの附属牧場であった。感無量である。職員には忙しい思いをさせてはいるがちょっと自慢でもある。