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第38号:継続と拡大の牧場運営に対する証文

吉村 格(准教授/牧場長補佐)

2009/3/19 更新
 全国の多くの大学附属農場が、特に人事管理や経済的な問題を抱え「酪農部門」から撤退あるいは縮小を余儀なくされている中を、我が富士アニマルファームは這々の体とはいえ、「教育」や「研究」のために当然のことのように継続し、さらにそれを進展させるために規模の拡大まで図れているということは、『収支も少しは考慮に入れてね。』と優しく囁いてくれる事務部からの励ましがあるからこそである。その言葉は、一般農家以上の生産レベルでなければ大学としての「教育」も「研究」も質の高さを保障するものではないし、少なくとも働く自分たちが納得できるわけがないと場員の決意を鼓舞するための推進力にもなっている。
 しかし気をつけなければならないことは、その励ましの「言葉」は不可能を強いるものではないと重々承知していながら、仕事を任されたことに対する我々の感謝の念は必要以上に自己犠牲を伴う危険性を孕みやすいということだ。人は、任された仕事は責任を持ってやり遂げたいという気持ちが強い分だけ、現在やっている仕事を俯瞰的に眺め、没頭した仕事を客観的に評価し、自分の手に負える内容であるか否かを判断することは実に困難である。ましてや、その歩みを止めて自分自身で大きく舵を切ることはとても苦痛なことである。仕事を任された者の能力には個人差があり、仕事によっては向き不向きも当然ある。「私でよかったのだろうか」「この方法でよかったのだろうか」と繊細でなくとも心はいつも揺れ動く。さらに、一方的に与えられる評価は様々であり、風にのって運ばれてくる噂の中には、無骨な励ましや真摯な意見も確かにあるが、それとは逆のものも多い。
 そんな折、人生の先輩である定年退職を迎えられる先生方から、紙幅が限られている大学広報の最後の御挨拶の中で、わざわざ富士アニマルファームのことを取り上げて頂き、ましてや感謝の言葉まで添えて頂くのは感無量で実に嬉しいことである。附属牧場(小野田牧場・富士アニマルファーム)の維持管理を長いこと携わってきた私にとっては、これまでやってきたことが少なくとも間違いではなかったことを確認できる証文であり、同時に今後も予想される悪路のこの上ない道しるべとなる。只、只、有り難い。