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第40号:「勲章」博士号取得

吉村 格(准教授/副牧場長)

2009/4/28 更新
 「百姓」。「牧夫」。農業を営み勤勉で実直な人達のことを指す言葉だと思っている我々は、これらの言葉で自分自身が呼ばれることは勿論吝かではない。少し嬉しいような誇り高い気分にもさせられる。とは言え、高見に構えて富士アニマルファームで働く場員のことを「たかが牧夫だろう」と唾棄されると心は穏やかでなくなる。それ以来、「牧夫」といえども体力ばかりでなく知力も人並み以上にもっていることを証明したいと長い間考えていた。
 今回、長田職員が東京農業大学大学院農学研究科に社会人入学が許され、環境共生学を専攻して『都府県酪農の展開過程と土地利用型の発展条件に関する研究』で博士号の学位を取得してくれた。将に『牧夫』の快挙である。かつて農協職員として西富士地域の酪農家との親しいお付き合いの中で地道にデーターを蓄積し、さらに富士アニマルファームの職員として実習などで来られた先生方にしつこく研究の方法論を学び、大学院の3年間は有り難いことに日本の農業経営経済学の大家である倉内宗一先生、小栗克之先生、新井肇先生の御指導を仰ぐことができた。
 「酒は飲むな」「寝ないで勉強しろ」「決して仕事の手は緩めるな」とイジメに近い私の励ましにも十分耐え抜いてくれた。通常勤務である早朝4時から夕方7時までの家畜管理作業だけでもへたばりそうで大変であるが、家に帰ると彼にはまだ3人の手のかかる子供達が待っていた。勉強する時間は深夜しかなかったはずだ。体力的にも精神的にも辛かったと思う。また、自腹を切っての大学院の授業料やデータ集めのための各地での農村調査など諸々の出費は小さな家計を苦しめたに違いない。それらを乗り越えてこうして手に入れた学位だからこそ価値はさらに高いと私は思っている。
 彼のこの快挙のために「出勤時間」の変更をしたり「休日」を代ったり、仕事の負担を少しでも減らして心配を和らげようと配慮してくれた栗田・寺岡両職員の優しさは言うに事欠かない。利他的な行為というよりも自己犠牲という言葉が近いだろう。長田職員の学位取得はこの二人への勲章でもある。これからも富士アニマルファームは互いの努力を支え合い、未来に向けて『年中夢求』で着々と次の世代を担える人間を育てていきたいと考えている。