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第76号:「大学付属牧場としての復興支援」

吉村 格(准教授/副牧場長)

2011/5/31 更新
『今回の大災害にあたり、犠牲になられた方々のご冥福をお祈り致しますと共に、被災者の皆様方へ心からお見舞いを申し上げます』私は無残に破壊しつくされた東北地方の惨状が伝えられるたびに圧倒され言葉を紡ぐことも忘れ、ただ呆然として紋切り型の言葉を念仏のように祈りのように繰り返すばかりである。10年間を生活した東北地方に対して口をあけることも口をつむぐことも許されないような居たたまれなさがあった。
 そんな私に対して逞しい復旧・復興の産声にも似た要望が伝えられたのは間もなくだった。乳用種ガーンジィ種を将来の経営維持のために手放したいが買ってもらえないかという福島県からの問い合わせだった。これまで富士アニマルファームが手を尽くして探していた乳用種である。私に与えられている予算規模は大きくはないが、先方と真摯に話し合った結果互いに納得の価格で決定した。そして取引条件が決まるや否や我々は未だ道路状況が芳しくない東北道に家畜運搬車を走らせ乳牛を取りに向かった。
 富士アニマルファームに搬入された2頭の乳牛は老いてはいるが十分に健康的である。先方の牧場で可愛がられ手を掛けられて飼養されていたせいか温和しく穏やかである。学生達の実習牛としては最適であった。既に我々は購入した目的を果たすために1年次看護学科、1年次獣医学科、5年次獣医学科の実習にそれぞれ提供し300名の学生達の将来に資するために利用した。さらに今後は受精卵の採取のスケジュールが組まれガーンジィ種の継続のために次世代へ「命」を継ごうとしている。
 我々は困っている人達に何ができるのだろうか? どのようにして手を差し伸べることがいいのだろうか? 共に生きるとはどのようなことなのだろうか? 慰めではない協力とはどのようなものなのだろうか? 今月中に6頭のホルスタイン種初妊牛を風評被害を受けているという栃木県から導入することにした。勿論、取引価格の交渉は需要と供給の関係で失礼のない冷徹さをもって行うつもりである。今後もご苦労されている東北地方の農家の人々に寄り添って活動しなければならないと考えている。