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第81号:「2年次獣医学科の牧場実習」

吉村 格(准教授/副牧場長)

2011/9/1 更新
 夏になると附属牧場が宮城県小野田町にあった時代の実習を思い出す。国の定める設置基準のためとはいえ、ナントとてつもない無駄を重ねていたことか。土地・建物・機械への多額な投資、年間の支出や働く人員の規模は現在と比べようもなく大きかったが、教育・研究・社会貢献・経営のどれをとっても成果はほとんど見られなかった。しかし、年に1回夏に実施されていた2年次獣医学科の牧場実習だけは今でも私の心の宝物である。
 学生達は本学からバスで8時間余り揺られて「附属牧場」にやってくる。24名規模の小さな宿泊施設に50名以上の人間を押し込んだ。水洗トイレは流れない、お風呂のお湯が出ない、3度の食事も学生達が輪番制で手作りしたものを食べた。足りないものがいろいろある中で大変な思いをしながら実施した3泊4日の実習。教員も学生もなかった。教員と教員が、教員と学生とが激しくぶつかり合いながら行われた3泊4日でもあった。
 皆、はち切れんばかりの若さがあった。それぞれの教員は何にも知らない学生に教えることが楽しくて一生懸命であった。今時のように教員より利口で偉そうな顔をした学生はいなかったし、教員も教員らしくあろうと無理をして大人の指導者を演じた。また学生達はそんな教員を信じてくれた。今から考えると当時の獣医師国家試験の合格率がいつも100%近くで安定していたのは面授を基本とした情熱のなせる技だったのかもしれない。
 今年の2年次獣医学科の牧場実習が終わった。初日から最後まで雨と雷に祟られた実習となったが、ただ単位を拾いに来る学生とは違って今年の参加学生のやる気と自制心は厳しい環境も何ら問題とすることはなかった。指導する若い教員達の学生に対する熱い思いは昔と全く変わっていないことが私には嬉しい。実習内容も随分とレベルアップしている。しかし残念なことに、苦労を積み重ね成熟してきた本実習は新しいカリキュラムへの変更に伴い来年が最後になるという。現場の私には「もったいない」としか言いようがない。