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牧場だより「継・いのち」 第102号 |「羽ばたけ、未来の農業へ」
第102号:羽ばたけ、未来の農業へ
長田 雅宏(講師/富士アニマルファーム)
2014/02/27 更新
2月14日、関東・東山地域は記録的な大雪に見舞われ、自然の猛威を目の当たりにしました。富士山西麓は甚大な被害を被り、特に西富士開拓地域では、大規模経営の牛舎が倒壊し、多数の家畜が犠牲になる惨事が起きてしまいました。被害に遭われた農業関係者の皆様には謹んでお見舞いを申し上げます。
さて、学生諸子は春休みに入り、新年度を迎えるための準備をしておりますが、来年度三年次になる動物科学科の学生は、長期の休みにしかできない実践的な畜産実習が待っています。2年次の付属牧場での農場実習は、実習とは記されていますが、私が思うに、「体験」であります。ゼロから始まる農業への挑戦はそんなに簡単なものではありません。しかし、この体験があったからこそ、次の「実習」に結びつくと考えております。また、農場実習は、学生の埋もれている畜産に対する興味、家畜への熱意を発掘する場でもあり、毎年数人ではありますが畜産の現場へ導くことができます。三週間の畜産実習は、飼養管理や専門技術を学ぶだけではなく、実際に農家に住み込み、生活を共にしてその環境と人間形成を含め実習をするという重要なカリキュラムです。ここで経験したことが生きる力の源となり、人生を謳歌できると考えております。本年度は私のところに7名の学生が訪れました。大収穫です。
畜産実習の意義は何かと自問すると、悪癖ですが「農業の継承」と思ってしまいます。農家戸数は既に250万戸まで減少し、日本農業は危機的状況ですから勘弁いただきたいと思います。2月には、これからの畜産を支える、「現場の原石」みがきのため酪農家、養豚経営、採卵鶏の農家へ、西は和歌山県、東は栃木県に旅立たせました。ご父兄の皆様には、大切なお子様が現場に放り出され、さぞご心配のことと察しますが、実習先は本学OB・OG、私の同級生の農家です。終始実習に徹しますのでご安心ください。那須の実習先の酪農家へ学生を送り届けた時にふと頭の中を過ぎった、「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない。そういう天地の理に立つのがわれだ」は、高村光太郎が那須町の開拓者を詠んだ詩です。この詩を理解できる学生に育て上げるのが畜産実習であり、私たちの義務です。毎年数人の卒業生は「実践」へと進み、時には農業で一旗揚げる者も現れます。しかし、就農へ導くだけの目的ではありません。食料生産について現場から確りと学ぶことが重要なのです。これもまた私の目論見であり、今まで接してきた農業への結果報告でもあります。国富の象徴である農業の発展のため、付属牧場は実学の精神を礎に、本学の教育を支えることを指針として日々邁進しております。