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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第121号:富士アニマルファームでの実習を通して

吉田 歩(獣医学科6年)

2014/09/25 更新
 本学は校舎が東京にあって産業動物の飼育が難しいという状況で、産業動物に接して興味を持つことの出来る場であるアニマルファームは重要であると思います。私は獣医学科に入学以来、学年での実習以外にもアニマルファームを訪れ、牛のワクチンや去勢など様々なことを実習させていただきました。毎回楽しく実習をし、牛の接し方から診療の基礎技術を始めとする多くのことを学ばせていただきました。
 普段取り扱う小動物とは異なり、牛は大きいので一旦暴れてしまうと人は簡単に弾き飛ばされてしまいます。初めは少しでも牛が動くと逃げてしまっていました。しかし、牛に対してどのように接すれば自分も動物も怪我をすることなく作業ができるかを学び、実習を通して接し方が徐々に身についたと思っています。そして産業動物がどのような存在であるかなど、スタッフの方から話を聞いて考えを改めるところもあり、勉強になることが多かったです。また、搾乳や哺乳もさせていただき、農家の仕事を知ることができたのも良い経験となりました。
 しかし、私が6年間アニマルファームに訪れた中でいくつか心残りな点もあります。まず一つは牛がうるさいことです。この場合のうるさいというのはよく鳴くということでなく動いてしまうことなのですが、他の実習で行った農家の牛に比べると人に触られることを嫌がって頭を振ったりお尻を振ったりということが多いように感じます。小動物志向で大きい動物に初めて触るという人はそれだけで産業動物に悪印象を抱いてしまうこともあります。産業動物に不慣れな学生に何回も実習で触られるので、触られることが苦手になるのは当然とも思えるのですが、もう少し人に馴れてはくれないものかと思ってしまいました。二つ目に、できれば妊娠している牛の検査もさせていただきたかったということもあります。実際の現場では妊娠鑑定をすることも多く、直腸検査やエコー検査で的確な判断をすることが求められます。どちらも数回の実習で身につくものではないので、リスクを侵してまで実習でやる必要性は低いのかもしれません。しかし妊娠牛の検査は現場の実習ではなかなかやらせてもらえないですし、実際の妊娠牛で検査をしてみたかったあるいは画像をもっと見てみたかったというのが本音です。もちろん、学生全員の実習ともなれば大きな負担となって流産の危険が増しますし、アニマルファームは実際に搾乳している農家なので無理は言えませんが…。私がこう思ったのは私自身が産業動物獣医師を志していたからなのかもしれません。
 不十分と思った点も書いてしまいましたが、毎回の実習は全体的にとても楽しく有意義なものでした。アニマルファームの皆様が実習に最大限協力してくださり、学生に実際の農家として産業動物の実習をさせてくださっていることはありがたく思います。実習を通して産業動物の魅力を知り、産業動物臨床を目指す学生が少しでも増えればと思います。
 最後にはなりますが、ほぼ毎年何故か訪れる私を毎回快く迎え入れてくださるスタッフの皆様、様々なことを教えてくださった諸先生方、そして拙い私の診察・治療の練習に毎度付き合ってくれた動物たちに感謝申し上げます。これから産業動物獣医師として仕事をしていく中で、ここで学んだことを活かしていきたいです。