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第152号:獣医学科4年次 動物衛生学実習を終えて思うこと

田中 良和(准教授/疾病予防獣医学部門)

2015/11/10 更新
 9月28日~10月2日の5日間、富士アニマルファームにて獣医学科4年次の動物衛生学実習を実施しました。今回は、3年次の動物衛生学実習と比較し、より臨床やフィールドに近い実習を体験してもらおうという趣旨で行いました。実習は、獣医内科学研究室、産業動物臨床学研究室、獣医臨床繁殖学研究室と協力して進めました。ご協力を頂いた教職員の方々には、この場をお借りして御礼申し上げます。

 実習の内科学分野では、牛の保定法に始まり、経口投与法、注射法、ルーメン採取法、採血方法、採尿法、乳房炎の検査法など実際に学生が一人ずつチャレンジし、時間の許す限り実習を行うことができました。繁殖学分野では、子宮内への薬液注入法、直腸検査法を学び、産業動物臨床では不可欠な手技を学ぶことができました。衛生学分野では、畜舎の環境衛生の測定法、飼料の分類や性質について、実際の飼料を見て学ぶことができました。学生は、牛を用いて臨床に必要な手技を学ぶということが初体験でしたので、皆、興味をもって実習を行っていました。講義だけではなく、実際に動物に触れて実習を行うということの大切さを理解してくれたと思います。3年次の実習と大きく異なるのは、動物衛生学の講義を全て終えていることでした。家畜の管理衛生学や感染症について知識があるのとないのとでは、動物を診るときに大きな差があります。本来衛生学は、経済的に畜産生産物をいかに効率よく産生することができるかということを目的としています。このため、あらゆる疾病を予防し、治療できるものは治療し、給与した飼料を最大限生産に活かすということが重要です。もちろんバイオセキュリティーの概念から、微生物を持ち込まない、持ち出さないということも重要です。

 今回の実習で学んでほしかったことは、健康な牛とはどういうものなのかということです。私たちは、何故解剖学、生理学といった学問を学んできたのかということを考えてほしいと思います。生理学的に正常であるということを見極めるために普段から動物をよく観察し、その行動や生理現象を頭に叩き込むことが、臨床現場では重要であると思います。牛ではよくカウシグナルと言いますが、正常な便(硬さ、臭い、色などの変化)、歩き方、座り方、尿の色や回数、外貌所見など注射器を使わなくても、「普段と違う。」、「何か変だ。」と気づくことが大切だと思います。動物は人間の言語は話せませんが、身体で異常を訴えているのです。獣医療は、医療では小児科に例えられます。乳児は、言語を発しませんし、一人では病院にもいきません。ましてや病院や医師を選択できません。医者は、親からの問診やちょっとした体調の変化を見過ごしてはなりません。獣医療も似た立場にあります。学生には、時間の許す限り、正常な動物を観察してほしいと思います。

 また、今回の実習では、注射を1本打つ時でも牛のどちら側から打つ方が良いとか、保定されている牛の状態から自分の立ち位置を考え、自分がこうしたら牛はどう動くのかなど、考えながら行動していくことの大切さを学生たちは学べたと思います。臨床現場では、次に何をするべきかということを、常に考えながら動くことが必要です。言われてから行動する、指示を待ってから行動するだけでは、通じない部分も多くあります。臨床に限らず、どんな職種でも「先を読んで行動する」ということは、非常に要求されますので、是非卒業までにできるようになってください。