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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第169号:家畜人工授精師講習会を終えて

尾池 紹子(動物科学科4年次)

2016/10/12 更新

 私は、来春より家畜人工授精師として働くため、夏休み期間中の約一ヵ月間、本学及び富士アニマルファームで講習会を受講しました。
 講義では、千葉県農業共済組合連合会、埼玉県農林総合研究センター、家畜改良事業団の方々から、本技術が家畜の改良に欠かせない技術であることを畜産現場の事例を通して紹介していただきました。大学構内の実習では、卵巣から卵母細胞を採取して体外受精を行い、各自で受精卵の生産を習得しました。はじめは顕微鏡下での操作に苦戦していましたが、毎日の特訓により実習後半には慣れた手つきで操作できるようになりました。また、東京都農林水産振興財団にてホルスタインの採卵と直腸検査を体験するとともに、牛の子宮を使って衛生的な処理をすることに重点を置いた手順を身につけました。
 講習会の総仕上げとして、富士アニマルファームに向かい、二泊三日の実習を行いました。初日は実習牛の発情鑑定を行うとともに、腟粘液から種付け適期を判定しました。二日目はホルスタインの体格審査を行い、一頭の牛を線形審査することにより体格や乳房の形状が個体ごとに異なることを実感しました。交配種雄牛の選定が如何に大切かを知ることができました。二日目の午後からは、私たちでホルモン処置計画を立てて過剰排卵させた黒毛和種の採卵を行いました。静岡県畜産技術センターの方々に子宮洗浄をしていただき、受精卵の捜索を行いました。1個数万円もする受精卵を処理するので皆緊張した面持ちで作業を行いましたが、22個の受精卵を回収し、うち18個を正常受精卵と判定しました。優良受精卵は緩慢凍結法で凍結保存するとともに、残りを発情が同期化された受卵牛へ移植しました。このうち2卵移植した1頭が双子を妊娠継続中との報告を受け安堵しています。凍結受精卵はアニマルファームの繋養牛に順次移植されるとのことですが、処理した受精卵が受胎して沢山の子牛が産まれてくるのが楽しみです。最終日は実習牛を用いて注入操作の練習を行いました。学校で練習した時とは違い、牛の動きに合わせて動きながら、手の感覚だけで注入器を進めるのは難しかったですが、子宮頸管を通過した時の「通った!!」という喜びは忘れることができないでしょう。
 授精師として技術はまだまだ身についてはいませんが、約5週間の講習会を終えて得た知識や経験を生かして来年からバリバリ働いていきたいと思います。
 充実した実習ができたのも、供卵牛、受卵牛、そして実習牛の繁殖周期を調整して提供していただいたおかげです。各種学科の実習が続く慌しい夏休み中にも関わらず、講習会に合わせて準備に当たっていただいた牧場教職員の方々に感謝いたします。