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第176号:めん羊希少品種マンクスロフタンからの採材のお礼

東京農業大学農学部畜産学科 家畜育種学研究室 教授 古川 力

2017/06/29 更新
 6月20日、東京農業大学厚木キャンパスより学生3名、院生1名、教員2名が牧場に伺い、マンクスロフタン6頭より血液サンプルを採取させていただきました。私どもの申し出を快くご了解いただきました吉村牧場長、羊の確保と採血箇所の毛刈りをしていただくとともに、めん羊をはじめ繋養家畜についてご説明をいただきましたエキスパート・スタッフの栗田様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
 マンクスロフタン(Manx Loaghtan)はグレートブリテン島とアイルランド島に囲まれたアイリッシュ海に位置する英国王室領マン島原産のめん羊で、原始的な羊の子孫である北欧短尾種に属する品種です。毛色はその品種名の由来ともなっているように、ねずみ色(マン語でLugh)、茶色(Dhoan)あるいは焦げ茶色(Lhost dhoan)をしており、顔と脚は焦げ茶色をしています。体格は小柄で、骨細で、体重は成熟時でも40kg程度ですが、かつては丘陵地で放牧されていたこともあり、身軽で強健です。雌雄とも有角で、4本角が多く、中には6本の角を有する個体もいます。角の形は様々で、巻き角もいればまっすぐな角もいます。
 羊毛は濃いチョコレート色で、皮膚の近くは茶色になっており、毛量は1~2kgと少ない。原産地では6cm位の短毛で直径も30μと細いが、英国本土の群は長さ12cm、直径35μと加工向きに改良されていると言われています。この羊毛は手織り製品の原材料として好まれており、その色合いから靴下やニット、無染色の毛糸、ジャケットなどに使われています。成長が遅いため15ヵ月齢でと畜され、枝肉も18kgしかとれませんが、赤身肉は低コレステロールで、風味がよいとされ、EUの原産地呼称保護制度の下で承認を受けています。
 マンクスロフタンは1950年代には20~30頭にまで減少し、絶滅の危機にありましたが、レア・ブリーズ・サバイバル・トラストなどの保護活動もあり、品種は再構築され、現在ではマン島とイギリス本土あわせて3,000頭まで増えました。実は日本でも保護活動が行われており、この富士アニマルファームもその一翼を担っておられます。日本へは、1990年、血統と個体を厳正にチェックされた雄5頭、雌15頭が輸入され、5カ所に分散して維持を開始しました。その後、国内での頭数も増加するのに伴い飼育する農場が増え、富士アニマルファームでは2002年から保護活動に参加されています。2017年2月20日現在、18カ所で66頭が飼育されていますが、当牧場が最大規模であり、この品種の保護にあたっては最も重要な役割を担っています。
 東京農業大学家畜育種学研究室では日本におけるマンクスロフタンの血統情報から、個体の近交係数と個体間の血縁係数を計算し、近親交配を避けて維持を行うことをお手伝いしています。2014年には大きな群で維持している当農場など3カ所から血液サンプルを収集し、DNAレベルでの遺伝的多様性の解析に取り組んでいます。今回は、昨年と今年に生まれた6個体の採血を行いましたので、先に収集したサンプルとあわせて解析を進めてまいります。この解析から、血統情報だけではわからない遺伝的構成が明らかになるものと期待していますので、結果を得ましたらご報告いたします。
 ご協力をいただきありがとうございました。
東農大調査チーム