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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第183号:家畜人工授精師講習会2017

動物科学科4年次 髙橋 帆乃佳

2017/10/19 更新
 約1か月に及ぶ家畜人工授精師講習会が今年も無事に終了しました。
 大学内の実習では各自でウシ・ブタの卵巣から採取した卵母細胞を体外受精して受精卵を生産し、受精卵を凍結保存する一連の流れを猛特訓しました。顕微鏡下で約0.1㎜の卵子を素早くかつ丁寧に扱わなくてはならず、慣れない作業にはじめは苦戦しましたが、毎日の特訓の成果もあり、実習の後半には全員が慣れた手つきで卵子操作を行えるようになりました。また、食肉処理場から譲り受けた子宮を用いた人工授精と胚移植の練習や、東京都農林総合研究センターにてホルスタインの採卵の見学と直腸検査を体験し、衛生的な人工授精や胚移植の技術習得を行いました。その際、子宮と注入器と自分の腕を一直線にして注入する「千葉のポーズ」の徹底した練習が、後の富士アニマルファーム実習で活かされてきます。
 講習会の総仕上げとして富士アニマルファームにて2泊3日の実習を行いました。初日は実習牛の発情鑑定を行い、腟粘液から種付け適期を判定しました。午後は講義で配布された資料を参考に、手探り状態ながらも搾乳牛の体格審査を行いました。発情鑑定と同様に、ここまで牛を観察することは初めてでしたが、人工授精・胚移植をするにあたって重要なことであり、受講生一同真剣に取り組みました。
 2日目は受講生自身がホルモン処置計画を立て、過剰排卵させたブラウンスイスと黒毛和種を静岡県畜産技術研究所の研究員の方々に子宮洗浄していただき、ブラウンスイスから正常卵6個、黒毛和種から正常卵12個を採卵することができました。1個数万円もする受精卵の処理はとても緊張しましたが、特訓の成果もありスムーズに凍結保存までやりきることができました。優良受精卵は緩慢凍結し、残りは発情同期化された受卵牛に研究員の方が移植しました。私たちが処理したこの受精卵がうまく受胎し、子牛となって生まれてきてくれることを祈るばかりです。
 最終日は実習牛を用いて注入操作の練習を行いました。大学内の実習のときとは違い、牛の動きに合わせながら、手の感覚だけで子宮頸管に注入器を進めることはとても難しい作業でした。しかし、身体に染み付いた「千葉のポーズ」のおかげで受講生全員が子宮頸管に注入器を通すことができました。この時の達成感は何事にも代えがたいものであり、きっと忘れることはないと思います。
 大学の夏休み期間を利用し、ほぼ毎日朝9時から午後5時までみっちり実習するというハードスケジュールでしたが、参加後の知識・技術は飛躍的に伸びたと感じています。講習会で学んだことは自身の研究の理解を深めることにもなりました。
 充実した実習ができたのも、供卵牛、受卵牛、そして実習牛の繁殖周期を調整して提供していただいたおかげです。各学科の実習が続く慌しいシーズンにも関わらず、講習会に合わせて準備に当たっていただいた牧場教職員の方々に感謝申し上げます。