どうぶつびより
前へ戻る

新任教員インタビュー:嶌本 樹先生

獣医保健看護学科広報委員会

 新任教員の嶌本 樹(しまもと たつき)助教をご紹介します。嶌本先生は日本大学 獣医学科出身の獣医師であり、岩手大学大学院 連合農学研究科(帯広畜産大学所属)で博士の学位を取得された後、2年間の研究員を経て、本年4月に獣医保健看護学科に着任されました。梶ヶ谷 博教授が定年退職された後の応用部門 保全生物学研究分野に配属され、着任早々ながら研究室の学生には「たつき先生!」と呼ばれて慕われています。

【自己紹介をお願いします】

 初めまして!獣医保健看護学科 応用部門 保全生物学研究分野に着任をいたしました嶌本樹と申します。私は高校生のときにヒトが引き起こす社会問題や環境問題に興味を持ち始め、獣医学科に入学をすれば何かができるはずという思いを抱き獣医師になることを決心しました。今思えば安直な考えであったと思いますが、幸運にも大学時代に熱血で魅力的かつ活動的な仲間に恵まれ、あたかも元々自然環境に興味を持っていたかのように野生動物に関わるようになりました。

【学生時代はどのような研究や活動を行ってきましたか?】

 学部生の頃は日本野生動物医学会の学生部会に所属し、週末や長期休暇を利用して野生動物に関わる活動に参加してきました。野生動物救護のボランティアや青森県下北半島のニホンザル調査など、様々な活動を通して、自然と触れ合い、その偉大さと逞しさ、また同時に脆さを知りました。研究でくじけそうになったときもこの学部生時代の経験が支えとなり、諦めず前進することができました。私にとって大切な原点です。
 大学院生の時には、糞を用いたホルモン測定方法を習得し、その方法を取り入れながらエゾモモンガの繁殖生態について研究をしていました。夜行性で小型哺乳類であるモモンガの行動観察からどのような繁殖をしているのを明らかにすることは非常に難しいため、糞中のホルモンを測定することで卵巣の活動を明らかにし、繁殖パターンの推測を行っていました。哺乳類では授乳に多大なエネルギーを使うため、授乳中に交尾をしない動物が多いのですが、モモンガは授乳しながらも交尾をしている可能性を示すことができました。
 学位を取得後は都市の中で生きるエゾリスがどうやって生きていけているのかを、ホルモン分析を用いて研究してきました。私が特に注目をしたのは“ストレス”で、これも糞を用いたホルモン測定方法で都市のエゾリスのストレスレベルを測ることができました。
 このように、ホルモン分析をはじめとした生理学な手法や知識を駆使して、野生動物が自然環境下でどのように生きているのか、どうしたらヒトと共存することができるのかを明らかにするため研究を続けています。

【獣医保健看護学領域において保全生物学はどのような位置付けにありますか?】

 保全生物学という分野は簡単に言ってしまえば、生態学や生理学といった生物学の応用的分野で、自然環境保全や野生動物管理を目指したものです。ことさら、獣医保健看護学科においては獣医学をベースにした教育プログラムが組まれていることを考えると、特に「保全」という側面に注目が集まるのではないでしょうか。しかし、獣医「保健」看護学科がヒトと野生動物の共存も目指していることを考えれば、「保全」の研究に加え、農作物被害や人身被害、外来種問題などいわゆるワイルドライフマネジメントといった研究も重要になってきます。また、応用的な研究だけではなく、生き物の生態や行動についての基礎的な研究も生き物を知る上では必須になります。基礎的研究、すなわちピュアサイエンスは生き物が持つ純粋な面白さを明らかにするだけではなく、応用的研究を実施する上でも重要なものです。どのような研究であれ、ワクワクする研究を通じて学生の方々には生き物と向き合ってほしいと私は考えています。 (詳しくは研究分野紹介を参照→保全生物学研究分野

【今後の抱負を聞かせてください】

 ヒトと野生動物が同じ空間を共有する限り、両者の間には問題が付きまとうかもしれません。そして、日本は人口減少の時代を迎え、今までの環境は大きく変化することが予測されています。それに伴い、ヒトと野生動物の関係も変わっていくかもしれません。これから起きるであろう新たな変化に目を向け、私たちが今後どのようにふるまっていくべきなのかを教育・研究を通し、学生や他の教員と共に考えていきたいです。