食のいま

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第22号:「肉料理のある食卓風景⑤-肉食の効用と代償-」

前号でわれわれヒトの祖先が肉を食べ始めた頃の「腐肉あさり」について書きました。現代では、今日の夕食は鶏肉にしようかしら、それとも豚肉にしようかしらと選択の余地がありますが、いずれにしても、私たちが食べている“お肉”は主に草食動物(牛)か雑食動物(豚・鶏)の肉です。


腐肉あさりにおいては、腐肉を見つけたら肉を食べる「チャンス到来!」ですから、動物の種類をえり好みする環境ではありませんでした。時には、肉食獣の腐肉をあさり、内臓の肝臓(レバー)も食べました。肉食動物の肝臓には草食動物に比べて30倍以上ものビタミンAが蓄積しているので、その結果、ビタミンA過剰摂取障害に陥ることもありました。現代社会では考えられないほどのビタミンAの過剰摂取障害とは、骨の関節部分がこぶし大に肥大化するもので、そういった骨も発掘されています。こうなってしまったヒトの祖先は、歩くのがとても大変だったことでしょう。せっかくチンパンジーと分かれて進化を始めたきっかけが二足歩行だったのに・・・・・。肉を食べ始めたわれわれヒトの祖先は、良質のたん白質を得るという効用に恵まれましたが、ビタミンA過剰摂取という負の代償にも見舞われたのです。