食のいま

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第39号: 伝統の器を楽しむ食卓風景 -8月-

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8月の夏の器として、涼しげなガラス製品をご紹介しましょう。バカラ(Baccarat)のSaint-Hubert(聖フーバート、フランス語読みでサンチュベール)と呼ばれている1940年頃にデザインされた器です。面出しされたボウル部に二股のドッシリとした安定感のある脚がついています。

バカラはフランスのバカラ村で作られるようになったガラス製品を指し、現在、ガラス製品の有名ブランドのひとつとして知られています。バカラ村の土壌は二酸化けい素(silica、SiO2)が多く、小麦栽培には向いていませんでした。そのかわり一帯にはうっそうと森が茂り、そこから産出する薪には事欠かなかったのです。これに着目したメッス市(Metz)の司教が、薪をガラスの溶融炉に使うことを思いつき、1764年にルイ15世に願い出て、ガラス工場を操業させました。これがバカラガラスの始まりです。
Baccarat村の名前の由来は、ローマ神話のワインの神様バッカスが関係していると考えられています。近郊にあったローマ時代の居留地の近くで、バッカス(ラテン語でBacchi)の祭壇(ara)の遺跡が発見されたことから、その地域をBacchi-ara(→Baccarat)と呼ぶようになったことによるとみられています。
バカラガラスには、小麦とワインというヨーロッパの主要食材が深くかかわっていたのですね。
市販のアイスボールやカットフルーツを入れてもいいでしょう。また、少し手の込んだアスピック(フランス語のゼリー寄せのこと。今回は赤ピーマンのムースを添えました)はガラスのカット面を生かすことができますね。さらに、フランスの夏野菜のごった煮・ラタトゥーユを盛ってもサマになるガラス器です。
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