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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

***『子育てする動物たち』対談!***
後編「子育て新兵器のとらえ方」

前編「ワンオペからの価値観の転換」はこちら

 前編ではベビーシッターの活用について語りました。今回は後編です。

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それでも本書を読むと、ニッポンの子育ても少しずつではありますが変化・進化している
と感じますが、先生はどう思われますか?
柿 沼
ヒトは道具を作り出して「手抜きを」好む動物だと思っています。
20世紀だけみても、粉ミルクの発明は子育てを大きく変えました。
こういった新しい道具が出てくると、性役割のハードルが低くなります。
クレーン車は物運びにおける性役割のハードルを大きく下げました。
子育てのように代々受け継がれる技術は、3世代ぐらい古くからの慣習や考えが残ると言われていますね。
つまり、粉ミルクができても、それを与えるのは母親、という時代があって、いまようやく脱却し、誰でもできるとなったのだと思います。
そしてお母さんのおっぱいがなくても子どもが育つようになると、父親の育児参加もより簡単になっていくと思います。
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なるほど、お母さんは親の子育てを思い出したり助言を受けたりして子育てをする。
その親は自分の親の影響を受けているわけで、合計3世代分の連鎖があるわけですね。
粉ミルク発明は影響力が大きかったというのは納得です。
たとえば抱っこひもも最近はより使いやすくなり、お子さんを自然に抱っこする男性を見かけることが増えました。
スマートフォンは、お子さんから手の離せない親御さんが、片手でも情報を検索したり、社会とつながることができたりするという側面があると思います。
スマホが子育てに及ぼした影響をどうお考えですか?
柿 沼
電話が普及して、一般家庭で使えるようになってから、実はまだ5~60年ほどなんですね。
やたらと長いコードを引っ張って、思春期の女の子が電話しているシーンがアメリカ映画やドラマによくありました。
その後、携帯電話が普及して“おしゃべり“は転換期を迎えた訳です。
ガラケーが最初に登場した頃は、脳腫瘍の原因になると真剣に議論されたりしていました。
電話は猛スピードで改良された道具の一つです。
それだけニーズがあり、私たちの本能を刺激する道具だと思っています。
テレビが普及すれば「テレビの見過ぎは子どもに悪影響」だとか、「カセットテープでお話を聞かせるのはもってのほか」とか、便利な機器がなかった時代に子育てをした親たちが警戒し、批判するのは昔からずっと続いていることなんです。
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そうか、あるあるなんですね。今に始まったことではないと。
柿 沼
そうです。大人が若い世代の行動や持ち物に警戒心を持つのはごく自然なことです。
新しいものはどんな危険をはらんでいるか、まだわかりませんからね。
それでも人は新しいものを創り出し、試し、不具合を調整していく能力を持っていると思います。
携帯電話は視力が低下するリスクも指摘されていますから、今後、目にやさしい機器が開発されたりするかもしれませんよ。
タバコも、体に悪いとかなり明確にわかったところで、世の中の流れが一気に変わりましたからね。
個人的には、携帯電話やスマホに関して社会全体が動くには、まだいろいろな根拠が少ないかなと思っています。
図書館
新しい道具も、社会全体で、よりよい使い方を探っていく、ということですね。