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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第198号:新牛舎の建設

吉村 格(教授/牧場長)

2018/10/30 更新

 元旦の日の出に合わせ富士山頂に向かって「今年こそは」と25年間祈り続けた成果か、それともみすぼらしい牛舎が新しい理事長・学長の琴線に触れることがあったのか、はたまた組織内の政治力学による効果なのか、何れにしても四半世紀の懸案事項であった既存牛舎の建て替え工事が昨年度になって急展開を見せた。業者が選定され、法人内の手続きが終わり、8月20日(月)からは旧牛舎の取り壊し作業が開始された。古い建物は瞬く間に大型重機によって撤去され、我々が夢に見た新しい牛舎建設のための敷地が現れた。やっとここまで来た、多くの人に感謝をしなければならない。

 9月4日(火)、超大型の台風が接近し悪天候の現場では「やる」「やらない」で揉めていたが、理事長・学長が到着されると地鎮祭は当然のようにして執り行われた。「雨降って地固まる」どころではない強風と豪雨は、盛られた土や祭式用の白砂を流し、会場のテントは建設作業員が足を踏ん張って支え、神主さんは体を張ってお供え物を守りながら祝詞を上げられた。このような苦労に耐えながら地鎮祭を実施された理事長・学長の覚悟と情熱は25年間におよぶ問題を解決したのは政治力だけではなかったことを我々に見せてくれた。お二人には深々と頭を下げて感謝を申し上げた。

 台風一過の翌日、風はまだ強かったが青く美しい眺望の富士山に登った。私の目的は浅間大社奥の院に鎮座するコノハナサクヤヒメに願い事が叶えられたことの感謝をすることにあったが、4年次の学生が学業成就のお札を頂くために一緒について来た。目的は違っていても旅は道連れ、楽しい山行になった。平成4年に私が宮城県小野田町から3頭の牛と2頭の馬、5頭の羊を引き連れて現在の富士アニマルファームに立ったこと、古く朽ちかけた牛舎にそれらを繋いで学生たちと実習したこと、それから1頭1頭増やして現在の家畜頭数と内容にまでなったことなど、懐かしい思い出話をしながら頂上に辿り着いた。社殿では25年間の時を経て「新牛舎建設」にまで至ったことを報告することが出来た。
 当然ながら、この新しい牛舎は旧牛舎に繋留していた家畜を収容するためのもので目的は多岐にわたり、ある意味では中途半端な牛舎にならざるを得なかった。しかも予算の問題、敷地の真ん中を走る青道の問題、建坪率の問題等があって建設条件は厳しかった。批判は承知で会議や打ち合わせで私がどうしても譲れなかったことは、暴風雨に晒されマイナス20℃近くになる当地の気象環境の中で、日々の作業に取り組む場員のストレスを極力少なくするための牛舎構造であった。9月10日(月)から基礎工事開始、10月20日(土)からは牛舎の躯体工事・屋根工事・壁工事などが行われ、完成予定は来年の1月末である。願わくば、この牛舎を実習で使った学生たちが喜んでくれたら有り難い。