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スコットランドの文化と自然に浸りながら研究を行う―グラスゴー大学留学報告―

獣医保健看護学応用部門 保全生物学研究分野 准教授 山本 俊昭

 2019年6月から3か月間、スコットランドのグラスゴー大学に短期留学して参りました。グラスゴー大学は、1451年に創立した歴史ある大学であり、現在は学生数が約2万人の総合大学であります。日本では室町時代にあたりますが、その時代に既にイギリスには3つの大学が存在し、4番目に古い大学がグラスゴー大学になります。そのため、キャンパス内にあるゴシック様式の建物は趣があり、本学の建物に見慣れている私としては圧倒されてしまう異空間の仕事場でありました。

 グラスゴーでは、3か月間という短い時間であったこともあり、今後の共同研究に向けた現地視察とこれまで蓄積されたデータを論文としてまとめることを主に行ってきました。現地視察では、私がお世話になった研究室の調査に何度か同行させてもらい、いくつかの現場を訪れる機会がありました。そのうちの一つであるDigwall町は、低木やコケが岩肌を覆う山が連なり、我々が想像するスコットランドを具現化したような場所でありました。しかしながら、実はそれは本来の姿ではなく、元は針葉樹が生い茂る森であり、長い時間の中で森林が消失したことを知りました。森林の伐採と狩猟によって10世紀までにヒグマ、17世紀までにイノシシ、18世紀までにはオオカミが絶滅してしまったそうです。現地では、スコットランドの自然史を学ぶとともに、自然を回復させるための調査・研究に取り組む現場を視察してきました。

  一方、学内においては主に論文執筆に励みました。論文を作成することは研究者にとって重要な仕事であり日本でも行うべきことではありますが、本学にいると様々な業務があり、纏まった時間を確保することが難しいです(言い訳もあります)。それ比して、グラスゴー大学では論文を仕上げるために多くの時間を充てることができ、すばらしい図書館を利用することで仕事が捗りました。さらにはラボのメンバーから解析方法を教わったり、グラスゴー大学の教授からは論文のコメントを直接いただくことができたことは大変貴重な機会であり、日本では中々進めることが出来なかった論文を大方仕上げることが出来ました。3か月間、歴史と文化が溢れるイギリスで研究に没頭する機会が与えられたことに感謝申し上げます。また、今回体験できたことを研究のみならず、本学における授業で伝えるとともに実習等においても活かしていきたいと思っております。