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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

石巻動物救護センター診療派遣報告 その2
レポート:手嶋 隆洋(獣医学部 獣医学科 獣医内科学教室 助教)


 2011年8月8日よりスタートした本学の獣医師による石巻動物救護センターでの診療活動も私で最後となりましたが、 9月28日には本学の池本学長も救護センターの視察に来られ、9月30日をもって無事に終了することができました。9月中に石巻の全ての仮設住宅が完成したこともあり、救護センター自体も9月30日の閉所、10月6日の閉所式をもって無事にその役目を終えることとなりました。

 本学の臨床系教員・大学院生によるリレー形式の1番手として派遣された小林正典先生が行かれた時には、犬・猫あわせて80頭前後の被災動物がセンターで保護・治療を受けている状況でしたが、9月30日の救護センター閉所の際には数頭の動物が飼い主のもとへ戻れない、里親が見つからないなどの理由から残っていたものの、石巻獣医師会の各動物病院の先生方が預かって、その後も献身的な保護・治療を続けて下さることとなり、救護センターの全ての動物達が復興へ向けての再スタートを無事に迎えることができました。3月11日に発生した未曾有の大震災・津波から約半年で、すべての保護された動物達が飼い主や里親のもとへ帰ることができたのは、石巻獣医師会・宮城県獣医師会の先生方をはじめとする多くの獣医師はもちろんのことながら、数多くのボランティアの方々の動物に対する愛情の賜物に違いありません。

 9月30日の閉所が近くなる頃には、連日多くの飼い主や里親の方々が動物を迎えに来られていましたが、迎えに来られた方々だけでなくボランティアの方々も動物が無事に帰れることを喜んで涙されている姿や、継続して治療が必要な動物達の今後についても心配されている姿は強く印象に残っています。短い期間ながらもこのような活動に参加させて頂き、診療活動を通じて実際の被災地の現状を知っただけでなく、多くの先生方やボランティアの方々に出会えたことは私自身にとっても大きな財産となりました。

 最後に、ご自身も被災されている中で動物救護センターの運営にご尽力なされた石巻獣医師会の先生方、多くのボランティアの方々はもちろんのこと、被災地の皆様や動物達に一日でも早く平穏な日々が訪れますことを願っております。

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石巻動物救護センター診療派遣報告 その1
レポート:余戸 拓也(獣医学部 獣医学科 獣医外科学教室 講師)


 日本獣医生命科学大学では2011年8月8日から9月30日までの2カ月間、獣医学部の獣医師免許を持つ教員および大学院生、小林正典、呰上大吾、原田恭治、森昭博、百田豊、余戸拓也、水谷尚、長谷川大輔、宮田拓馬、宮川優一、手嶋隆洋らの11名が、9月末で閉所を予定している石巻動物救護センターにて、バトンリレー形式で診療活動を行っています。

 石巻動物救護センターではボランティア獣医師が仙台市獣医師会と連携しながら、診療活動を行っていますが、それでも継続的に獣医師が常駐していない点が問題とのことで、日本獣医生命科学大学の獣医師達が、被災動物たちの救護のために協力体制を敷いています。

 石巻動物救護センターでの日課は9:00に朝礼があった後、診療を開始します。犬はボランティアと一緒に散歩に行くので、猫の診療から開始します。猫は主に嘔吐、下痢、口内炎といった消化器疾患の他、クシャミ鼻水といった呼吸器疾患、結膜炎などの治療が中心となります。それぞれ病気がある個体と、健康な個体では猫舎が分かれていて、他の健康な個体に伝染病を広げないように注意が払われています。健康な猫がいる猫舎では、まるで猫カフェのように、まったりとした癒される空間が広がっていました。

 犬が散歩から帰ってくるタイミングを見計らい、猫の診療を手早く終わらせます。避妊や去勢手術をした後の傷口のチェックの他、皮膚疾患、消化器疾患、慢性心疾患、関節疾患、泌尿器疾患などが多い疾患で、これらを検査・治療していきます。

 午後は資材の整理などを行いながら、15時頃から診療が始まります。午後の診療が終了すると、カルテを整理して、翌日の必要な投薬を一頭ずつ処方します。保護している動物の頭数は、8月28日現在78頭とのことです。9月上旬の時点では、ボランティアの獣医師や動物看護師がいると19時くらいには全て終了しますが、そうでないと結構遅い時間までかかってしまいます。

 また各自石巻赴任中には石巻勉強会という卒後教育セミナーの開催が企画されており、地元やボランティアの獣医師に、臨床現場で役立つ最新情報を提供しています。

  9月に入り一般のボランティアは休みを利用して来てくれますので、週末や祝祭日に多くなります。しかし、獣医師と動物看護師のボランティアはその逆で、自分の病院での仕事があるため、とくに週末や祝祭日には協力が期待できません。みなさん動物病院が休みの時に手弁当でかけつけてくれるのですが、慢性疾患を持つ動物たちのためにも継続的な治療を続ける上で、ボランティアで活動していく難しさを感じました。また、このような動物シェルターの運営には、動物の専門的な知識を持ち、動物衛生学の観点から飼育管理の出来る動物看護師の重要性も改めて認識しました。

 最後に被災した動物や被災地の皆様が、一日も早く通常の生活を送られるようになることを願っています。

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