5年次大動物臨床実習は例年であれば、6月に3週連続して行い、3週目の週に削蹄の実習を第二校舎で行っていました。しかし、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で実習講師を招聘できず、残念ですが削蹄実習を行うことができませんでした。令和3年度においては獣医学科5年次における各種実習のプログラム調整作業もあり、削蹄実習を4月に2日間ずつ(13~14日、20~21日)2週にわたって実施することを計画しました。この案を実習講師に相談したところ快く引き受けていただけたことから、2年ぶりで削蹄実習を行うことができました。
今回の削蹄実習を行ううえで、新しい企画を立案しました。例年は、と畜場から譲渡を受けた牛趾を材料に、削蹄用の鎌を用いて伸びた蹄を削って整えていく実習でしたが、それに加えて、富士アニマルファームから成牛を運搬して、第二校舎にて実際の牛を用いた蹄病治療のための削蹄デモンストレーション行うものです。今回招聘した実習講師は、35年間福島県農業共済組合に勤務し、一般診療の傍ら蹄病治療・予防指導を専門に行ってきた先生です。現在は福島県内で開業され農家の蹄病診療や削蹄師の講習会で講演・指導を行っています。その先生の技術を学生に見てもらうだけでも有意義な実習になるのではないかと考え、第二校舎において成牛を一時的に係留するための準備を行いました。
牛を保定して削蹄するには削蹄用の枠場が必要です。これは昨年度予算の中から獣医総合臨床実習(参加型臨床実習)経費から捻出いただき、3月末に第二校舎に購入・納品されました。次に牛の運搬ですが、本来であれば大学所有の家畜運搬車を用いて自分たちで運搬できればよかったのですが、残念ながら富士アニマルファームにて所有していた家畜運搬車は老朽化のため廃車されてしまいましたので、家畜運搬業者に牛の運搬をお願いすることにしました。家畜運搬車の購入については、今後費用対効果を評価した後に、大学に提案させていただく予定でおります。そのため、今回の牛の運搬費用は事務部施設管理課で負担いただくことになりました。現在の第二校舎では成牛を一定期間繋留できる装備がありません。そのため実習牛にとっては負担かもしれませんが、日帰りとならざるをえませんでした。もし、成牛を2~3泊飼育できるような施設に改良できれば、運搬経費の節減と実習牛に対する精神的、肉体的負担も軽減できるのではないかと思われます。
第二校舎に到着した実習牛は、運搬車から下ろされスロープを降りて、削蹄用の枠場に収容されて、無事治療用削蹄を受けることができました。実際に、蹄球糜爛を発症している実習牛もおり、単なる説明だけでなく実際に治療手技を行うことができ、非常に有意義な実習でした。
実習牛を運搬車に戻した後は、実習場に戻って2人1組で屠場由来の牛趾を用いた削蹄を実施しましたが、学生の皆さんは実習講師の指導を受けて熱心に取り組み、より正しい形に整形することができました。最後に各蹄の仕上がり具合に対して評価をしていただき終了しましたが、学生には削蹄実習を通して、牛の運動器特に蹄の健康が生産性に及ぼす影響は非常に大きく、削蹄の重要性と奥深さについて認識してもらうことができたものと考えております。
今回の削蹄実習実施におきましては、新型コロナウイルス感染症蔓延防止措置発令中にも関わらず福島県よりお出でいただき、熱心に学生の指導をしていただいた実習講師の角田先生、削蹄用枠場の購入経費を捻出いただきました獣医総合臨床実習委員長の竹村先生、実習牛の選抜と運搬トラックの出発・到着時に対応いただいた富士アニマルファーム萩田先生はじめ牧場スタッフの皆様、そして牛の運搬に際し対応いただきました事務部施設管理課 菅課長に感謝申し上げます。