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アメリカにおける動物看護―パデュー大学留学報告その2―

獣医保健看護学臨床部門 講師 小田民美

 前回の留学報告では主に付属教育病院と動物看護師の業務内容について紹介しましたが、今回はパデュー大学動物看護学科の教育、臨床実習について紹介します。

 米国で動物看護師になるためには、通常、まず米国獣医師会(American Veterinary Medical Association; AVMA)が認定する動物看護コースを持つ2年制、または4年制の学校(200校ほどあります)を卒業します。その後国家試験を受験し、さらに各州の認定試験を受験して合格するとようやく動物看護師になれます。

 授業科目は、実は、日本の動物看護系の学校とそれほど違いはないです。しかし、アクティブラーニングが基本で、講義中もディスカッションの時間が多く、比較的自由に発言する習慣があるようです。本学と同じような学修支援システムがパデュー大学にもあり、事前学習用の資料や動画が数々配信され、また講義中に録画されたものを復習のために繰り返し聴講できます。毎回の授業では前回学んだ内容についてのミニクイズを行ったり、講師とのチャットルームが多く活用されていたりなど、学生たちは授業中だけでなく、授業時間外でも熱心に自主学習する姿がよく見られました。
 日本と同様、低学年では講義と基礎系の実験室で行う実習が主となりますが、2年生からは「ラボトレーニング(Pre臨床実習)」が始まり、3年生以降は週3日間クリニックローテーションに入り、多くの時間を付属教育動物病院で過ごします。4年生では獣医療コミュニケーションやマネジメントの実習もあります。最大の特徴はやはり付属教育動物病院でのクリニックローテーションをはじめとした臨床実習です。AVMAでは認定校に対して、1200時間にもおよぶ臨床実習を条件としており、実際の患者動物を対象とした実践をとても大切にしています。もちろん技術レベルが保証されていなければなりませんので、クリニックローテーションに入る前に、ラボトレーニングで十分な訓練を積みます(写真1~2)。

▲写真1:外科手術用実習室

▲写真2:採血の実習中

 パデュー大学では獣医学生と動物看護学生のために、「スキルスラボ(Clinical Skills Laboratory)」と呼ばれる、専用の訓練施設を設置しています(写真3~4)。本学にもスキルラボが設置されていますが、模型や治療機器、さらには専門スタッフも在室していて、とても充実した施設でした。教育施設におけるTeaching Animalの飼育規制が非常に厳しい欧米では、このような模型が必須だということです。採血、注射、気管挿管など数々の模型が並ぶこの実習室は、学生が実習外でも利用できるようなシステムになっていて、試験前には多くの学生が練習していました(写真5~10)。ラボトレーニングも含めて、臨床系の実習は全て教育病院の臨床スタッフが参加しているため、現場を想定したより実践的な内容となっています。さらにはこの先、教育病院での実習でも同様のスタッフがスーパーバイザーとして指導に入るため、学生たちもスタッフとコミュニケーションを取りやすく、スムーズに教育病院での実習に進めることができる体制となっていたことも感心しました。

▲写真3:スキルスラボ(小動物用)

▲写真4:スキルスラボ(大動物用)

▲写真5:静脈注射、カテーテル設置用模型(犬)

▲写真6:経静脈採血模型(犬)

▲写真7:聴診模型(正常音と様々な異常音が流せる)

▲写真8:気管挿管模型(犬・猫)

▲写真9:経静脈採血・注射模型(牛)

▲写真10:直腸検査模型(牛)

 また、米国では、診断、予後判定、手術、処方以外は動物看護師が行えるため、現場では非常にレベル、そして精度の高い技術が要求されます。そのため、AVMAではEssential Skills Listという200項目にも上る技術項目のリストを、在学中に全て訓練、実践することを義務付けています。実習中にその項目を教員、スーパーバイザーの動物看護師、もしくは獣医師に直接見てもらい、きちんと実施できたら合格のサインをもらいます(写真11~12)。これは全米で統一された臨床教育プログラムであり、動物看護師として現場に出た際にこれらの技術項目ができるようにそれぞれの学校は訓練しておかなければならない、とはっきりと目標を定められています。このリストには動物のグルーミングや保定などの基本的なものから採血、注射、尿検体などの採取(膀胱穿刺含む)、静脈内カテーテルの設置や気管挿管に至るまで、非常にハイレベルな項目も含まれています。

▲写真11:Skills List

▲写真12:Skills List(中には手順書とサイン欄)

 現在の所、日本で国家資格となった動物看護師が実際に何ができるようになるのか、具体的な内容はまだ決定していませんが、将来的に日本でも動物看護師が採血や注射などができるようになることを想定すると、教育の現場でもより実践的な臨床実習プログラムへと改革を検討していく必要があると強く感じました。
 今回の成果を本学の動物看護学教育、臨床実習に活かしていくとともに、学内に留まらず、動物看護学カリキュラムの見直し、資格認定・更新制度の整備、業務内容の検討や継続教育支援など、様々な活動の場に学びを還元し、今後の日本の動物看護学分野の発展のために寄与していきたいと考えています。
 今回の留学に際しまして、ご支援いただいた全ての皆様に感謝申し上げるとともに、これからの大学教育、そして間近に迫った「愛玩動物看護師」の国家試験に向けて、今後ますます精進して参ります。

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