大学院では動物医療だけでなくヒト医療にも関心を広げており、集大成として参加した医学系の学会で、自分の発表にヒトの病院の研究機関から関心を持っていただけたことは、今でも大きな成功体験として心に残っています。
2017年3月 獣医学部卒業
2021年3月 大学院博士課程修了
漠然と「動物の医療に関わる仕事がしたい」という思いがあったこと、そして大学院で培った経験を活かせる環境で働きたいと考えたことが、この仕事を選んだ主な理由です。大学院修了後は、まず人体薬の規制当局に就職しましたが、働く中で、獣医師として動物医療に関わる仕事に挑戦したいという気持ちが次第に強くなりました。そこで、大学や大学院で学んだ知識をより活かせる場所を探し、現在の職場へ転職しました。人体薬では、一般的に対象疾患ごとに担当部門が分かれていますが、動物薬では動物種や疾患にかかわらず、取り扱う薬の特性を幅広く理解することが求められます。分野にとらわれず新しいことを学びたいという好奇心や、知識を広げて物事を横断的に捉えられるようになりたいという自分の目標と合っており、現在の仕事に大きな魅力を感じています。
動物薬の製薬会社は、製造販売したい医薬品について、農林水産省(動物医薬品検査所)に申請資料一式を提出し、審査を受けます。私の主な仕事は、この申請資料を作成することです。基本的にはドイツ本社の開発部門から提供されるデータをもとに資料を作成しますが、日本国内での申請に必要な臨床試験等を実施することもあります。ドイツ本社で実施された試験は主にEUや米国の規制に合わせて設計されており、各国で薬事規制の国際的な基準の統一が進んでいるとはいえ、必ずしも日本の申請要件にそのまま適合するとは限らないためです。特に、産業動物に使用する薬では、その動物由来の食品を人が摂取しても問題がないかという観点からも審査が行われ、そのための試験・資料の準備が重要になります。各国の開発担当者と相談しながら準備を進めることも多く、ドイツ本社と一体となって新しい動物薬の承認取得に取り組んでいると感じられる仕事です。
大学院での研究とは異なり、現在の仕事では、日本の法令を遵守し、審査基準に合った試験を設計する必要があります。そのため難しさを感じることもありますが、より適切で効果的な試験設計を考える過程には大きな面白さがあります。動物種や疾患を問わず試験データを確認したり、実際に試験設計に関わったりするため、幅広い分野の知識が求められます。現在の仕事には、学部で学んだ獣医学の知識、大学院での実験経験、そして人体薬の規制当局で得た法令や審査に関する知識を総合的に活かすことができています。もちろん、薬事に関する最新情報を常にアップデートしていく必要はありますが、これまでの経験を土台に新しい課題へ取り組める点に、とてもやりがいを感じています。まだまだ学ぶことの多い日々ですが、仕事を通じて、獣医学や動物薬という枠にとどまらず、根拠をもって科学的に正しいと考えることを主張できる人になりたいと思っています。
通学に片道約2時間かかっていたため、学業とアルバイトで1週間が過ぎていましたが、趣味も全力で楽しんでいました。また、2年生の時に参加した海外実習(タイ)、5年生の時に参加した産業動物を対象とした参加型臨床実習(岡山県農業共済組合)や海外実習(オーストラリア)を通して、牛や馬に限らず様々な動物を実際に見る機会に恵まれ、国内外の動物医療に興味を持つきっかけになりました。一方、大学院では獣医生理学研究室に所属し、ラットと向き合いながら、動物の飼育管理、実験、学会発表、論文作成に没頭する4年間を過ごしました。大学院では動物医療だけでなくヒト医療にも関心を広げており、集大成として参加した医学系の学会で、自分の発表にヒトの病院の研究機関から関心を持っていただけたことは、今でも大きな成功体験として心に残っています。在学中にのびのびとやりたいことに取り組むことができたのは、家族や研究室の先生方の支えがあったからであり、今でもとても感謝しています。