実習体験は全て今の自分に役立っており、体当たりで現場に飛び込める学生の特権を存分に駆使して、貴重な人生経験を積むことが出来ました。実習で出会った全ての方々に感謝しています。
2005年3月卒業
1つめの理由は、獣医師として農業というものづくりに関わりたいと思ったことです。2つめの理由は、獣医師の本領である臨床(疾病対策や飼養技術向上)に留まらず、生産データを操りながら包括的な経営コンサルテーションを畜産農家に提供する獣医師になりたいと思ったことです。そう思ったきっかけは、大学5年生の夏休みに行った北海道の共済実習で、酪農のベンチマーキングに触れたことでした。昼間は聴診器とメスを持っていた先生方が、晩には農場の生産データを相手にPCのキィを叩いて経営の分析をするコンサルタントに変身するのを見て、「かっこいい!」と強く思いました。その後豚の実習に行き、豚の可愛さと養豚産業の面白さに魅了されました。豚は牛と違って生産の回転が速く、鶏よりも生産工程が複雑かつ多様で、経営戦略1つで収益性が大きく変わってしまいます。そこに面白みと可能性を感じ、養豚管理獣医師になろうと決めました。
養豚管理獣医師の仕事は、養豚生産者とコンサルタント契約を締結し、農場を定期的に訪問するのが基本の業務です。その中で経営の改善、安定化を目的として感染症対策と飼養管理の改善、人材教育、豚舎設計まで広範に扱いながら農場が抱える悩み事を解決し、農場のビジョンを共に作り上げ、そこに向かってプロセスを積み重ねて行きます。感染症対策では、種々の検査や臨床症状、疫学情報を組み合わせて農場に存在する感染症の種類と動態を読み込み、ワクチン・投薬戦略を組み上げます。また大事なのは「病気を入れない」ことであり、農場を出入りするあらゆるものに対してバイオセキュリティを構築します。生産性の改善では、生産データを活用した客観的な現状評価を踏まえて優先度の高い問題を抽出し、具体的な改善策を経営者、現場スタッフとともに話し合い実行に移します。状況をモニタリングし、時には軌道修正を加えながら農場さんと伴走するイメージです。
養豚管理獣医師の仕事は非常に多岐にわたっています。大学で学んだことを総動員し、新しい知見を常に勉強しながら仕事をしています。現場で起きていることは複雑であり畜産を取り巻く情勢は刻々と変化しています。当時は最適解だったことが2年後にはひっくり返っていることも珍しくありません。約20年この仕事を続けて来て思うのは、「問題を無くすことが獣医師の仕事ではない」ということです。問題は常にあります。農場さんと一緒に問題に向き合い、試行錯誤を重ねる過程こそがかけがえのないものです。時間がかかっても皆で1つのマイルストーンにたどり着き、次のストーンに向かう。この繰り返しの中で農場のアイデンティティーが明確になり、どんな困難にも立ち向かう自信が付いていきます。こうして農場さんと一緒に自分も成長できることがこの上ない喜びです。獣医師という専門性は、プロフェッショナルとしてチームに貢献する力を与えてくれています。
1つはアーチェリーです。1年生の頃は、アーチェリー部に入って仲間と一緒に大会に出たり、よその大学の射場にお邪魔したり、文字通り朝から晩まで弓ばかり引いていました。アーチェリー部の仲間の絆は強く、大学を卒業したのちもお互いの結婚式に出席した程です。同じ目的に向かって汗と涙を流した仲間は、大学生活で得たかけがえのないものの1つです。
もう1つは、学外実習です。単位に関係なく、動物病院、他大の大学病院、野鳥保護施設などなど興味を引かれたところにはとりあえず飛び込んでみました。そして北海道の共済実習を経て産業動物獣医師になることを決意し、その後に行った養豚関係の実習で今の仕事に出会うことができました。実習体験は全て今の自分に役立っており、体当たりで現場に飛び込める学生の特権を存分に駆使して、貴重な人生経験を積むことが出来ました。実習で出会った全ての方々に感謝しています。