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【新着論文】ネコAB式血液型の研究: 交差適合試験で不適合となったB型ネコは、実はAB型であった!〜その表現型と遺伝子型の特徴〜

論 文 名:
Phenotypic and Genetic Characterization for Incompatible Cross-Match Cases in the Feline AB Blood Group System
和訳)ネコAB式血液型における交差適合試験不適合ネコの表現型と遺伝子型の特徴
著  者:
宇埜友美子1,矢口雅美1,小林 輔2,小野沢栄里3,落合和彦4,5,吉田佳倫6,中村千尋7, 宇田川智野1, 近江俊徳1,5
1獣医保健看護学科・基礎部門比較遺伝学研究分野
2アニファ動物病院柏病院
3獣医保健看護学科・臨床部門人と動物の関係学分野
4獣医学科・獣医衛生学研究室
5生命科学総合研究センター
6付属動物医療センター
7日本小動物医療センター
掲載雑誌:
Frontiers in Veterinary Science 8:7204455, 2021
DOI: 10.3389/fvets.2021.720445

研究内容:
ネコの AB式血液型(ヒトのABO式血液型とは全く異なります)は、ネコの輸血にとって大変重要な血液型で、A型、B型、AB型に分類されます。血漿中には、自分の血液型とは異なる抗原の抗体を生れつき持っています(B型のネコの95%は抗A抗体、A型のネコは13から35%が抗B抗体を保有します。そのため、輸血の際は同じ血液型の血液を輸血します)。本研究は、当初B型と判定されたネコの血液を同じB型ネコに輸血に使用するため、交差適合試験(患者に提供されたドナーの血液が適合するか判断するための検査)を行ったところ不適合であったことから、輸血には使用できず、その原因を調べた研究です。研究の結果、市販の血液型検査キットでは検出できない程度の微量のA抗原を保有しており、生理学的にはAB型であることを明かにしました。また、その遺伝子は、一般的なB型の遺伝子とは異なっていました。非常に珍しいケースの知見を集積することは、血液型の分類の精度を向上させ、より安全な輸血用血液の選択に有用な情報となります。なお、本研究成果は、Frontiers in Veterinary Scienceの伴侶動物の血液型(Blood Groups in Companion Animals)の特集号として掲載されました。

■研究者情報

宇田川智野(獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門 比較遺伝学研究分野・助教)
近江俊徳 (獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門 比較遺伝学研究分野・教授)