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【新着論文】犬の難治性てんかんにおける脳梁離断術の効果:明らかな発作の減少と犬と飼い主のQOLの向上が確認される

論 文 名:
Corpus callosotomy in 3 Cavalier King Charles Spaniel dogs with drug-resistant epilepsy
和訳)難治性てんかんのキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル3例における脳梁離断術
著  者:
浅田李佳子1,水野郷志1,湯祥彦1,濱本裕仁2,穴澤哲也3,伊藤大介4,北川勝人4,長谷川大輔1,5
1日本獣医生命科学大学大学院獣医学専攻獣医放射線学研究室
2日本獣医生命科学大学付属動物医療センター
3日本動物高度医療センター名古屋
4日本大学生物資源学部獣医学科獣医神経病学研究室
5日本獣医生命科学大学生命科学総合研究センター脳研究部門
掲載雑誌:
Brain Sciences 11:1462, 2021
doi.org/10.3390/brainsci11111462

研究内容:
この症例シリーズは、3例の薬剤抵抗性てんかん(難治性てんかん)に罹患したキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(以下、キャバリア)に対し、てんかん外科手術の一法である脳梁離断術を実施し、その術後1年間の治療成績を示した報告です。犬に対する脳梁離断術は1995年にその手術法のみ報告されていましたが、これまで実際のてんかん症例で行われた報告はありませんでした。今回手術をおこなった3例のキャバリアは、皆4つ以上の抗てんかん薬を投与しても1日に数十回もの発作を起こしてしまう超難治例で、また高頻度の発作のみでなく、意識レベルや活動性が著しく低下している症例でした。脳梁離断術は右脳と左脳の主な連絡経路である脳梁を切断することで、発作の拡がりを抑え、発作を起こりにくくするてんかんの緩和的治療です。残念ながら、3例中1例は心臓の問題で術後すぐに亡くなってしまいましたが、2例は術後に顕著な発作頻度の減少(平均で80%減)と重篤度の改善が認められ、また意識レベルや活動性も正常化し、飼い主や他の犬と遊んだり、コマンドが効くようになったりして、犬自身と飼い主の生活の質(QOL)も向上しました。飼い主の脳梁離断術に対する満足度は高いものでした。この症例シリーズは薬剤抵抗性てんかんの犬に対する現代的なてんかん外科、脳梁離断術の初めての報告であり、てんかん外科が今後難治性てんかん治療の1つになり得ることを示しています。なお本研究は科研費の助成を受けて行われています(「小動物臨床におけるてんかん外科の導入」課題番号17H01507)。

■研究者情報

濱本裕仁 (付属動物医療センター・助教)
長谷川大輔(獣医学部獣医学科 獣医放射線学研究室・教授)

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