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【新着論文】世界で初めて牛トロウイルスのリバースジェネティクス(人工ウイルス合成)に成功しました。

論 文 名:
Reverse Genetics with a Full-length Infectious cDNA Clone of Bovine Torovirus
和訳)牛トロウイルスの完全長感染性cDNAクローンによるリバースジェネティクス
著  者:
氏家誠1、2)# 、江藤由佳2)*#、漆山尚也2)* 、田口文広2)、浅沼秀樹3)、Luis Enjuanes4) 、神谷亘5) 
#共同筆頭著者
1日本獣医生命科学大学生命科学総合研究センター
2日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医感染症学研究室(学部学生*)
3国立感染症研究所 インフルエンザ及び呼吸器ウイルス研究センター
4Department of Molecular and Cell Biology、National Center of Biotechnology (CNB-CSIC)、Campus Universidad Autónoma de Madrid、Spain
5群馬大学大学院医学系研究科生体防御学分野
掲載雑誌:
Journal of Virology. 2021 Nov 24;JVI0156121.
American Society for Microbiology
doi: 10.1128/JVI.01561-21.
研究内容:
タイトルにあるリバースジェネティクスとは、ウイルスの目的の場所に目的の変異を導入する技術であり、いわば「人工ウイルス合成法」と言えます。牛トロウイルスは世界中に蔓延しており主に仔牛の下痢の原因となっています。このウイルスは、現在トバニウイルス科に属していますが、以前はコロナウイルス科に属しており、見た目も性質もコロナウイルスによく似ています。トロウイルスやコロナウイルスは、ウイルスの中で最大のRNAゲノムを持つため、上記のリバースジェネティクスを確立するのが極めて難しいことが知られています。これまでの成功例は、現在流行中の新型コロナをはじめとする種々のコロナウイルスに限られており、トロウイルスの成功例はありませんでした。今回、私達は初めてトロウイルスのリバースジェネティクスの確立に成功し、人工的に組換え牛トロウイルスを作製することに成功しました。さらに、この技術を用いて、ウイルスのHemagglutinin-esterase蛋白質の培養細胞での働きを調べたり、感染細胞に緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する組換え牛トロウイルスの作製を行いました。私達が確立したこの技術によって、牛トロウイルス遺伝子を自由自在に改変する事が可能となり、ウイルス増殖メカニズムの解明や、新しい牛トロウイルスワクチンの開発などにつながることが期待されます。(上記の人工ウイルスは、文部科学省への承認を得た後、法律に則った施設内で作製しています。)

■研究者情報

氏家誠(獣医学部獣医学科 獣医感染症学研究室・准教授)

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