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【新着論文】プロバイオティクス乳酸菌が腸内の発酵に与える影響を試験管レベルで解明

論 文 名:
Amounts and species of probiotic lactic acid bacteria affect stimulation of short-chain fatty acid production in fecal batch culture
和訳)糞便培養における短鎖脂肪酸産生に影響するプロバイオティクス乳酸菌の量と菌種
著  者:
大橋雄二1、藤澤倫彦1
1.日本獣医生命科学大学応用生命科学部食品科学科・食品衛生学教室
掲載雑誌:
Bioscience of Microbiota Food and Health, 42 (1), 100-103, 2023.
doi: 10.12938/bmfh.2022-048.
研究内容:
 大腸で生成された乳酸は、乳酸利用細菌によって酪酸とプロピオン酸に代謝されます。乳酸を生成するプロバイオティクス 乳酸菌 は、大腸において乳酸産生を通じて酪酸とプロピオン酸の生成を刺激する可能性があります。酪酸とプロピオン酸は短鎖脂肪酸と呼ばれ、生体の健康維持に有益な作用をもたらす物質です。そのため、プロバイオティクス乳酸菌を摂取したときに、短鎖脂肪酸の生成が多くなることが健康維持に繋がると考えられます。私たちは様々な量、菌種のプロバイオティクス乳酸菌を糞便培養時に接種して、短鎖脂肪酸生成の影響を解析しました。その結果、大腸で短鎖脂肪酸の生成を増加させるためには、大腸内で109 cfu/g 以上のプロバイオティクス乳酸菌が必要であることが示されました。乳酸菌でもヘテロ乳酸発酵をする乳酸菌は同じ量の糖から生成する乳酸の生産量がホモ乳酸発酵をする乳酸菌よりも少ないです。そのため、大腸において短鎖脂肪酸の産生を増加させるためには、ヘテロ乳酸発酵をするプロバイオティクス乳酸菌はホモ乳酸発酵をする乳酸菌よりも多くの菌数が必要になることも示されました。これまで、腸内環境に影響を与えるプロバイオティクス乳酸菌の量や菌種の違いについては明確に示されてきてはいませんでしたが、この研究成果が一つの指標となると考えられます。

■研究者情報

大橋雄二(応用生命科学部食品科学科 食品衛生学教室・教授)
藤澤倫彦(応用生命科学部食品科学科 食品衛生学教室・教授)