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【新着論文】アライグマの適応力の背景:体長と頭骨形態の相違にみる亜種間交雑の可能性

論 文 名:
Body Length and Craniometrics of Non-Native Raccoons in Two Regions in Middle Japan during Early Invasion Stages
和訳)導入初期の二地域における外来種アライグマの体長と頭骨形態
著  者:
加藤卓也1、山﨑文晶1、土井寛大1,2、川道美枝子3、羽山伸一1
1.日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 野生動物学研究室
2.日本学術振興会特別研究員PD・森林総合研究所 野生動物研究領域
3.関西野生生物研究所
掲載雑誌:
Animals, 2022 Dec 23;13(1):55.
doi: 10.3390/ani13010055.
研究内容:
 環境への適応が進む前の導入初期における外来種の形態学的特性は、その適応性に関する重要な情報を示す可能性があります。神奈川(鎌倉市)と京都(舞鶴市)における導入初期の頃のアライグマの解剖記録と頭骨標本を対象に形態計測学的研究を行いました。体長(頭胴長)に関する重回帰分析の結果、雄は雌より大きく、年齢階級とともに成長し、地域間の差はありませんでした。また、頭蓋サイズは雌雄それぞれで異なるアロメトリー(相対成長)を示し、雌雄とも年齢階級、体長、脂肪蓄積度の増加に伴って大きくなりましたが、地域間で差があったのは雌のみでした。したがって、今回の結果は、アライグマの性内淘汰や餌資源をめぐる競争において、性別や成長段階に伴う体格差が重要という仮説を支持するものでした。また、北米では複数の亜種が同所的に生息していますが、二地域のアライグマの形態はいずれの亜種の記録とも一致しませんでした。すでに報告されている遺伝学的研究の結果も考慮すると、国内に分布する外来種アライグマは、導入前または定着前に雑種化が起きていた可能性が高いと考えられます。亜種間交雑とその形態学的・生態学的影響を実証するためには、さらなる研究の展開が必要です。

■研究者情報

加藤卓也(獣医学部獣医学科 野生動物学研究室・講師)
羽山伸一(獣医学部獣医学科 野生動物学研究室・教授)

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