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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

「家族のいない犬と猫をしあわせにするプロジェクト」
(クラウドファンディング事業) 報告

【プロジェクト概要】
 犬や猫等の伴侶動物は、人との暮らしを通して、人に癒しや幸せを提供してくれる愛しい存在です。伴侶動物と暮らす飼い主達にとって、飼っている犬や猫は、病気になれば、動物病院に連れていき、人医療にも匹敵するほどの治療をしたり、病気にならないような予防をしたり、家族同然に大事にされています。一方で、犬や猫は人が改良して作った動物なため、野生に戻ることはできず、人という伴侶や家族を見つけなければ行き場を失ってしまいます。生まれてきて、必ず家族を見つけて幸せになれる訳ではなく、ペットとして生産されたにも関わらず、流通にのれずに「ペット」になれない、あるいは、家族がいても虐待され家を失う犬や猫が多く存在することも現実です。
 今回のプロジェクトの目的は、犬や猫の生産現場である「ブリーダー」や「オークション」において、売れ残り「ペット」になれなかった動物達、「ブリーダー」等の生産現場で繁殖動物として引退し、これから家族を見つけ「ペット」になりたい動物達、「ペット」であったとしても、飼い主から虐待を受けた動物達、災害時に一時緊急保護が必要となった動物たちなど、行き場のない動物達に対して、実証研究を基に福祉を向上させることです。ペットになれずに、病気になっても放置されたり、ペットであっても虐待を受けてしまったりする動物達の動物福祉を科学的に向上させ、飼主のいない犬と猫の現状を改善することも目的とします。
 本プロジェクトにおいては、①一時緊急保護が必要となる犬や猫の健康診断や検査の実施ならびに収容する飼養環境の整備 ②売れ残りの原因や傾向の検証 ③生産現場において引退した犬や猫の飼養環境や譲渡の適正の実態把握 ④適正飼養および譲渡を促進するための動物適正管理ソフトの開発 ⑤動物虐待に遭った犬や猫の保護および収容 ⑤虐待にあった犬や猫、繁殖現場から引退した犬や猫のリハビリ/譲渡 を実施します。
 家族がいない犬や猫の問題を根本から検証し、その予防策と対応策、犬や猫を適正に管理するためのツールの開発、治療や譲渡を通し、不幸な動物を減らすことを目的とします。「人も動物も安心して暮らせる幸せな社会」の構築のための社会貢献プロジェクトです。

【結果報告(令和5年12月時点)】
■一時緊急保護が必要となる犬や猫の健康診断や検査の実施ならびに収容する飼養環境の整備

[方法]
虐待、売れ残り、生産現場からの引退などにより緊急保護を必要とする犬や猫の収容と健康診断、検査を行う。一時保護を行う期間中、その原因や傾向を検証、対象動物の特性、遺伝疾患、感染性疾患に関わる検査を実施し、治療可能な動物は治療のうえ、譲渡を行う。また、一時避難先として本学の一部を活用し収容できる飼養環境の整備を行う。

■売れ残りの原因や傾向を検証
[方法]
本プロジェクトの協力ブリーダーおよびオークションにおいて、流通に乗ることのできなかった犬および猫のデータを収集する。協力ブリーダー100か所/オークション1か所から2週毎にデータを収集し、売れ残り予防策を講じ、さらに売れ残り動物の保護➡治療➡譲渡のシステムを構築することで売れ残り放置ゼロを目指す。
[結果]
2023年10月30日までに、オークションやペットショップからの保護を117頭、動物虐待の被虐動物を21頭、合計138頭の動物の一時保護を行った。オークションやペットショップからの保護の傾向としては、心疾患/循環障害、脳疾患/神経症状が多く、整形外科的疾患や眼疾患内/眼奇形が多く、全般的には、先天性疾患が多かった。138頭中108頭は譲渡し、25頭は予後不良および治療困難により安楽死あるいは死亡、1頭は返還、5頭は一時預かり継続中である。

(表1.研究室で一時保護した動物の内訳)

頭数
保護 心疾患/循環障害 20
眼疾患/眼奇形 14
脳疾患/神経症状 20
整形外科疾患 15
上部呼吸器感染症/真菌症 6
泌尿器疾患 4
その他 38
虐待 暴行 10
ネグレクト 11

■生産現場において引退した犬や猫の飼養環境や譲渡の適正の実態を把握
[方法]
生産現場において繁殖動物は3~6歳で引退するが、引退後の犬や猫の実態や動物福祉については問題視されていることから、ブリーダーへのヒアリングおよび現地視察により実態を把握し、協力ブリーダーにおいて引退動物の現状、譲渡の適正等に関わるデータを収集する。さらに、譲渡促進のためのシステムを構築することにより引退犬猫放置ゼロを目指す。
[結果]
協力ブリーダー72件に現場視察を実施した。
譲渡促進のためには、引退前からの適正な飼養管理が必須であり、適正な譲渡には、動物の健康状態や行動が適正であることが必須であると考える。今回の現場視察においては、引退動物の状態のみならず、繁殖施設自体に多くの課題を抱えていることが露呈し、生産現場の改善が、動物福祉の向上には必須であることが示された。
現在もブリーダー視察等の活動は継続中であり、実態把握を含め、さらに詳細な調査および検証が動物福祉の向上、引退動物の適正な譲渡、システムの構築には必要である。

【クラウドファンディング会計内訳】

(単位:円)

項目 2022年度
(~2023年3月末)
2023年度
(2023年4月~8月末)
合計
人件費 1,896,493 522,990 2,419,483
保護動物飼養管理用 138,312 127,782 266,094
治療費 349,857 0 349,857
動物輸送費 19,140 0 19,140
通信・データ解析 1,380,522 690,327 2,070,849
視察費用 135,661 9,714 145,375
返礼品 23,829 0 23,829
合計 3,943,814 1,350,813 5,294,627

【関連リンク】

家族のいない犬と猫を幸せにするプロジェクト(外部リンク)
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