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【新着論文】犬の鼻腔疾患に対し、麻酔を用いない検査による診断予測モデルの作成

論 文 名:
Construction of diagnostic prediction model for canine nasal diseases using less invasive examinations without anesthesia
和訳)犬の鼻腔疾患に対する麻酔処置を用いない低侵襲検査による診断予測モデルの構築
著  者:
中澤優太1、大島嵩史1、金本英之2,3、藤原亜紀1
1. 日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科獣医放射線学研究室
2. DVMsどうぶつ医療センター横浜
3. ER八王子動物高度医療救命救急センター
掲載雑誌:
J Vet Med Sci, 2023 Oct 19;85(10) :1083-1093
doi: 10.1292/jvms.23-0315.
研究内容:
 犬の鼻腔疾患にはアレルギーとの関与が疑われる非感染性鼻炎、真菌感染による鼻炎、異物による鼻炎、歯牙疾患に関する鼻炎などのさまざまな原因による鼻炎のほか、鼻腔腫瘍なども発生します。症状からだけでの診断は不可能であり、確定診断は全身麻酔を用いたCTもしくはMRI検査、内視鏡検査、病理組織検査が必要になることが多いですが、必ずしも全ての鼻腔疾患においてこれら検査を早急に行う必要はありません。一方で鼻腔腫瘍や真菌感染による鼻炎、異物による鼻炎などは早急な全身麻酔下でのCTもしくはMRI検査などによって確定診断を行うことが重要です。そのため我々は犬の鼻腔疾患と過去に確定診断された103症例のデータ(品種、年齢、臨床徴候およびその期間、X線検査所見)を組み合わせ、全身麻酔を用いない低侵襲な検査による診断予測モデルを作成し、その有用性を新たな86症例のデータによって評価しました。その結果、作成した診断予測モデルは特に早急に治療を行うべき鼻腔腫瘍や真菌性鼻炎に対して感度・特異度※が高く、そのほかの疾患においても感度・特異度がわずかに下がりますが有用性が確認されました。本研究から全身麻酔を用いない検査によって、犬の鼻腔疾患を早急に麻酔検査によって確定診断をするべきか予想できることが明らかとなり、明日から実際の診療で応用できる診断予測モデルが作成できたと考えられます。
 ※感度:病気の人を検出する力
 特異度:病気でない人を検出する力
(文責:藤原亜紀)

▲腫瘍・真菌性鼻炎に対する診断予測モデル

■研究者情報

藤原亜紀(獣医学部獣医学科 獣医放射線学研究室・准教授)

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