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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第221号:乳房炎総合マネジメントシステムの実践

赤松ファームクリニック 赤松裕久(日本獣医畜産大学 平成3年卒業)

2019/12/24 更新

 私は平成3年に本学を卒業し、北海道NOSAI、静岡県職員を経て、本年4月に畜産コンサルタントとして開業しました。主な業務は、国が進める農場HACCP、JGAPといった衛生管理に関する認証支援と、牛乳房炎の総合防除です。
 牛の乳房炎は原因が多岐にわたるため、フィールドでは十分に制御されていません。そこで、乳房炎の原因を、①人、②牛(健康性)、③方法(搾乳法、治療法)、④設備・環境、⑤評価指標の5つの要因から分析し、抽出された問題点についてリスク評価を行い、対策の優先度を決めて、改善を図る手法を開発しました。現在、これを「乳防炎総合マネジメントシステム」と名付け、静岡県をはじめ各地で実践しています。

 また、搾乳機械メーカーである中央オリオン株式会社と契約し、同社の技術スタッフにその手法をレクチャーしています。今回、2019年11月12日から2日間、本学の付属牧場に協力していただき、オリオン社職員12名と一緒に、「乳防炎総合マネジメントシステム」を実践しました。具体的には、11月12日の昼から牧場を訪問し、搾乳牛の健康性(ボディー・コンディション・スコア、第一胃の充満度、糞スコアを計測)、搾乳環境の衛生、搾乳機械の保守状況などを調査しました。そして、夕方からの搾乳に立ち会い、搾乳方法を確認するとともに、前搾りからミルカー装着までの時間を計測しました。翌日は朝5時から搾乳に立ち会い、全頭の乳頭スコアを計測しました。また、このような調査と並行して、全頭の乳汁細菌検査も実施し、潜在的にどのような菌を保有しているかを調査しました。計100を超える項目を調査し、その結果を総合的に分析して、後日、牧場に報告する予定です。

 2日間にわたり、たいへんにお世話になりました。また、搾乳に立ち会った際、牧場スタッフの計らいで数名、搾乳も体験させていただきました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
 現在、酪農を取り巻く情勢は厳しく、疾病による損失を回避することは喫緊の課題になっています。とくに、乳房炎はせっかく搾った乳を廃棄するため、経済的損失に加えて精神的な負担の大きい病気であり、その対応が望まれています。そのため、乳房炎の総合防除について企業スタッフに伝え、広く普及を図ることは、意義のあることと思います。このような活動にご協力していただき、心より感謝申し上げます。調査結果については整理して報告しますので、付属牧場の乳質管理にご活用下さい。
 2日間、たいへんにありがとうございました!