卒業生からのメッセージ Report

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学
竹村 望さん

『北の大地で生命を育む
~人工授精師の仕事~』

竹村 望さん 2006年度卒

釧路丹頂農業協同組合 白糠支所 音白人工授精所
家畜改良課 家畜改良係

■ 現在の仕事に関して

私は北海道の道東にある釧路丹頂農協に勤務し、人工授精師として今年4年目を迎えます。
人工授精師とは?…人工授精師としての日々の仕事は、農家さんが牛の発情を見つけ、「人工授精の受付お願いします」と申込をしてきたところから始まります。全地区合わせて一日当たり約50件の受付があり、私を含めた授精師4人で巡回します。一人15件程度受け持つことになるので、1日の総移動距離は担当地区にもよりますが100~150kmになります。各農家への訪問は、勿論一人で回らなければならないので、この職業では運転免許は必須です。朝から農家を回り、事務所に帰ってくるのは昼過ぎで、その後事務整理等をしています。

訪問先の農家での作業を簡単に説明すると、牛の状態(発情)を確認して人工授精すると決まったら、液体窒素ボンベから凍結した精液が入っているストローを取り出して温水で融解したのち、精液注入器にセットして人工的に授精します。無事に受胎(受精)していれば、約10ヶ月後に子牛が誕生します。
しかしながら、人工授精師というのは、ただ、授精をすればいいという訳ではありません。直腸検査(直腸に手を入れて子宮や卵巣の状態を診る事:以下、直検)をして「人工授精します」となれば、‘どの雄牛の精液’を注入するか農家さんと相談しますが、精液の選択の際に頭を抱えることも少なくありません。
まず牛を見て、「乳房を良くしたい」、「乳量を上げたい」等の要望を聞き、将来より良い性質をもった牛が産まれてくるよう、精液を選びます。しかし、いつも作業がうまく進む訳ではありません。農家さんに呼ばれて直検をしてみても、「発情が良くない」、「発情早期」等、いろいろな要因が重なって、今回は人工授精できないという場合は、「獣医さんに診せてください」、「次回の発情にしましょう」等、農家さんに納得してもらえるように今後の処置を丁寧に説明します。他にも受精卵移植や妊娠鑑定(妊娠60日前後に直検をして受胎の確認)もします。

人工授精師となって3年が経過しましたが、いまでも農家さんと関わっていく中で教えられる事が多く、日々勉強の毎日です。例えば、「牛の栄養面を改善すれば、繁殖率も上がるのでは?」など、議論を交わす事も度々あります。最近は、難産の牛を獣医さんや、農家さんと一緒に引っ張ったこともありました。丁度、真冬の寒い時期、その場にいた皆で白い息を吐きながら、無事に産まれた子牛の誕生を喜びました。教科書に載っていない事をこの3年間、現場で学び、また身に付けてきました。知識も大切ですが、(臨機応変に)状況に応じて作業をこなせる。これが人工授精師の仕事なのかもしれません。

■ 学生時代の思い出

研究室に所属するまで、バイトや、遊び(勿論、勉強も…)に没頭していましたが、研究室に入ってからは実験の毎日でした。3年生のうちは先輩について実験の工程、培養液の作り方、器具の洗い方等、色々指導してもらい、いざ、4年生になって自分の卒論に着手してみると、中々上手くはいかず、軌道に乗るまでに時間がかかりました。そんな時は、友達とお酒を飲みながら夜遅くまで語り合ったものです。明け方近くまで飲んで、また朝早くから実験をしに大学へ行く、という事もしばしばありましたが。それでも、辛い時にそっと手を差し伸べてくれる友達がいたお陰で、私は逃げ出さずに頑張れたのだと思います。卒業後は中々会えなくなりましたが、苦楽を共にした友達は今も私にとって大切な宝物です。

■ 在校生へのメッセージ

とにかく、今ある時間を大切にして、毎日を楽しんでください。4年間なんてあっという間です。色んな事にチャレンジして興味のある事を見つけることです。その興味が、将来就きたい仕事への道標になるかもしれません。私も、在学中は色んな事に悩んで「自分がしたい事ってなんだろう?」と模索していました。でも、良いチャンスに恵まれたお陰で繁殖学に興味を持ち、その興味を活かした今の仕事に就く事が出来ました。学生時代には気付けなかった事ですが、悩んだ分だけ、迷った分だけ、きっとそれらが自分の糧になります。目まぐるしく変化する多感な時期だからこそ、得られるものも多い筈です。それから、友達や先生方と大いに語って下さい。何気ない会話の節々に、今後のヒントがあると思います。限りある学生生活を、悔いのないよう満喫して下さい。

仕事風景①

実習ではありません。仕事中です
(妊娠鑑定中→元気一杯の赤ちゃんウシがお腹にいます)。
写真に写っている男性は、牧場のオーナー成田さん。
成田さんも日獣大畜産学科(現、動物科学科)の
卒業生で大先輩です。

仕事風景②

同じく成田牧場で仕事中。赤ん坊が暴れるぅ~。