学生からのレポート Report

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

夏の集中実習 人工授精講習会を終えて

関沢アニマルクリニック 関澤将之

 私は家畜人工授精師として、獣医師と共に牛の人工授精業務に従事しています。私が所属するクリニックでは、獣医師が主に体内採卵によって受精卵を作成しています。これから、私も体外受精により受精卵を作成し、地域の酪農家や繁殖農家の皆様の役に立ちたいと考え、講習に参加しました。
 今回の体外受精卵性生産に関わる講習会では初めて経験することや、初めて体験することばかりで勉強になりました。豚卵巣から卵子を吸引する実習では、はじめはきちんと卵子を吸い出せているのかよくわからないまま作業をしていましたが、針の刺し方や卵巣の保持の仕方、シリンジの持ち方などを意識していくうちに、コツをつかむことができました。本番の牛卵巣から採取した卵胞液から顕微鏡で卵丘細胞に包まれた卵子を探し当てた時の感動、培養-媒精するにいたる一連の操作ミスで卵子を見失ってしまったときの落胆、一喜一憂の実習でした。この失敗を通じて、気をつけるべきポイントを学ぶことができました。成功も失敗も体験できたので、私にとって中身の濃い有意義な講習会となりました。
 私は家畜人工授精師としての経験が浅く、本講習が始まるまでは、講習の内容を理解できるか不安に思っていました。指導をいただいた先生方や日本獣医生命科学大学の学生さん、同じ外部受講生の皆さんのおかげで無事に講習を終えることができました。特に牛島先生には、講習会が始まる前の連絡調整をしていただいたり、技術の指導をしていただいたりと、何から何まで大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
 畜産の現場では厳しい情勢が続いていますが、今回の貴重な経験を生かし、地域の農家さんたちの力になれるようにこれからも学び続けていきたいと思います。

関澤さん

(有)エイブルファーム 梅崎太郎

 家畜体外受精卵移植の資格取得のため講習会に参加させていただきました。
 私が仕事をしている栃木県は受精卵による牛の生産が活発で、特に近年では酪農家による和牛の受精卵産子の生産が増えています。また、乳用種においても体内受精卵や体外受精卵の生産や導入を行い、牛群の効率的な改良を行っている方もいらっしゃいます。
 普段は和牛の飼養・繁殖管理をしながら、体内採卵やOPUの補助や検卵を行っていますが、体内受精卵が取れない牛からでも受精卵ができるOPU-IVFの凄さを日々感じながら仕事をしています。今回、自分で豚や牛のと場卵巣から卵子を吸引採取し、媒精した卵子を培養するという、普段は専門機関に依頼している作業を自分で実施することで、一連の作業がいかに難しいかを痛感しました。また、一見すると使うことができないように見える卵子を媒精し、成熟するところを目の当たりにしたことで、生命の未知の力と奥深さを感じました。今後は日常の繁殖業務の中で、今回教えていただいた卵子の検索や体外受精卵の生産・ランク付けなどにも挑戦し、専門的な技術をさらに深めていきたいと考えています。今回の受講に際し、ご指導いただいた牛島先生、宮村先生にこの場をお借りし深く御礼申し上げます。

左梅崎さん右細川さん

JA士幌町家畜診療課 林伶哉

 1日10頭ぐらいのペースで人工授精を行いながら、年間約500頭の乳牛に受精卵移植(ET)しています。士幌町では生産者が独自に購入した和牛の受精卵をJA職員あるいは開業獣医師がETする方式を採用しています。受胎率は未経産牛と搾乳牛共に50%程度を維持していることから人気も高く、今年は8月現在ですでに500頭を超えるようになりました。IVFの技術に関連する情報や技術を生産者の皆様に還元すること、そして自身のキャリアップできれば、地域の発展につながると考え受講することにしました。
 本講習会を通じて、日常的に使用していた体外受精卵がどのような生産過程を経て作出されているのかを体験することができました。また、講師の先生方や全国で活躍している受講生と意見交換することにより、自身の技量を測り知ることができ、私自身の技術にはまだまだポテンシャルがあることを認識できる新鮮な講習会でした。
 昨今の社会情勢の煽りを受け、生乳生産抑制や飼料の高騰などで、地域の酪農家の経営が逼迫しています。士幌町には酪農家の他にホルスタインの妊娠牛を専門に販売する農家や、専門の育成農家、繁殖和牛農家さんも存在し経営形態は三者三様で、いかに酪農家の経営を持続できるかが求められています。これらの経営に対応した受精卵移植関連技術を提供することにより、地域一体となって増産・改良を進めたいと考えています。例えば、和牛繁殖農家で生産した受精卵を和牛受精卵の生産し、育成農家や酪農家で移植を行い、生まれてきた和牛子牛を和牛繁殖農家が引き取るような仕組みを管内でつくれたら、コストの軽減につながります。ET技術が受精卵をとおして経営の橋渡しの役目を担うではないかと考えています。
 ET免許を取得して5年経ち、受精卵移植頭数は年々増え続けていますが、士幌町は地域として受精卵移植はまだまだ期待値があるので、今後は一人で1000頭ぐらい移植頭数を増やす予定です。JA士幌町では採卵または体外胚生産も全て外部に委託しているので、将来受精卵の生産にも携わりたいと考えています。

手前から片桐さん林さん橋元さん

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