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動物由来のハンタウイルス感染症について

教授 有村 裕(感染防御学分野)

 ゴールデンウィークの真っ最中に大西洋を航行するクルーズ船でハンタウイルスの集団感染が起きたニュースが入ってきました。日本人も1人含まれているとのことで、イギリスに移送されて現在のところ症状はないとのことです(5月12日現在)。その様子を見て、新型コロナが発生した2020年に横浜港に到着したダイヤモンド・プリンセス号にそっくりな状況なので閉鎖空間の怖さを改めて思い出しました。

 ハンタウイルスと聞くと、50代以上の獣医や動物関係の人なら、実験動物従事者にハンタウイルスが感染した話を学生時代に聞かされたのを思い出すと思います。実験動物を取り扱う際に、このウイルスを持っている可能性があるので、自分が感染するかも知れないというネズミ由来の人獣共通感染症として教わりました。その当時はホットな話題だったこともあり、自分の周りにもこのウイルスによって生じる腎症候性出血熱という病態について研究してる人もいました。

 月日は流れ、もうそんなことはないだろうと何となく思っていましたが、まさか、船で集団感染の話を聞くとは思いもよりませんでした。しかも今回はヒトーヒト感染も起きたということで驚きましたが、このウイルスには、1993年以降に認識されるようになった肺に病変を作るアンデスウイルスというタイプであることを知りました(私の学生時代には知られてませんでした)。そしてこのウイルスについて改めて教科書を開いてみると、ウイルスの分類が変わってました(下図)。以前は、ブニヤウイルス科のハンタウイルス属でしたが、現在ではハンタウイルス科に変わり、近縁には致死率の高い危険なウイルスがいくつも並んでいます。この先もまた分類は変わることがあるかも知れませんが、まずは今回の集団感染の規模が大きくならずに収束に向かうことを願っています。また感染を制御するには日頃から色んな病原微生物についての研究が行われて性状を把握しておくことが必要だろうと思います。




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